重光宏之

重光 宏之（しげみつ ひろゆき）

1954年1月28日生まれ、東京都出身。日本の実業家であり、在日韓国人二世。ロッテグループ創業者、重光武雄の長男で、弟に現会長の重光昭夫を持つ。韓国名は辛 東主（シン・ドンジュ）。母は日本人の重光（旧姓：竹森）初子。

経歴

幼少期は松濤幼稚園、青山学院初等部を経て、青山学院大学理工学部経営工学科を卒業。1978年には同大学大学院理工学研究科経営工学修士課程を修了した。卒業後、1978年に三菱商事へ入社。その後、情報システム関連のベンチャー企業を起業したが、事業としては軌道に乗らなかった。

ロッテグループでの歩み

1987年、ロッテグループのロッテ商事に入社。米国工場での勤務やロッテ総合研究所への配属を経て、1988年にはロッテ商事取締役に就任。株式会社ロッテでは1991年に常務取締役、2001年には取締役副社長へと昇進した。

2009年、父・武雄の会長退任に伴い、弟の昭夫と共に株式会社ロッテホールディングスの取締役副会長に就任。この時期、宏之は日本ロッテ、昭夫は韓国ロッテを担当する体制となった。日本チューインガム協会会長やロッテ国際奨学財団理事長も兼務した。

2011年には、ロッテ商事の代表取締役副会長兼社長に就任。これは、ロッテ商事設立以来初めての社長交代であった。

経営からの排除と兄弟間の対立

2014年12月、ロッテ商事社長を含むグループ内三社の役職を解かれた。さらに同月26日、ロッテホールディングスの取締役会において、宏之の副会長解任が可決された。そして2015年1月9日、同職の解任が正式に発表され、これによりグループ経営から事実上追放された。会社側は人事理由を明らかにせず、この一連の動きは、父・武雄の後継者としてのロッテグループ支配権を巡る、弟・昭夫との激しい「お家騒動」の一幕と広く認識されている。

経営中枢から退いた後も、宏之は経営権の奪還を図る動きを見せた。2015年10月には、ロッテの筆頭株主である資産管理会社・光潤社の株式過半数を確保し、臨時株主総会で昭夫の排除を試みたが、ロッテ本体への経営復帰は叶わなかった。

韓国での法廷、そして遺言

韓国ロッテの資金疑惑を巡る捜査が2016年に始まり、同年10月には父や弟と共に在宅起訴された。しかし、韓国ロッテの経営に直接関与していなかったことから、無罪判決を得ている。

2018年2月、弟の昭夫が贈賄罪で実刑判決を受けて収監された際、光潤社の社長として「日韓ロッテグループの代表者が犯罪行為で有罪となったことは前代未聞」と批判し、昭夫の即時辞任とガバナンス刷新を強く訴える声明を発表した。

その後も、2020年4月に昭夫の会長解任を求める株主提案を行ったが、同年6月の株主総会で否決され敗北。同年6月には父・武雄の遺言状が発見され、後継者として昭夫を指名し、宏之を実務・人事から排除する内容であったことが判明。これにより、長年にわたる兄弟間の後継者争いは事実上の終結を迎えた。

言語とアイデンティティを巡る論争

日本で生まれ育ったため、日本語を主な言語として使用し、韓国語は聞き取りは可能だが話すことはできない。2015年に韓国メディアのインタビューで日本語を用いたことから、韓国国内で批判を受けた経験がある。「韓国語を忘れた韓国人が韓国人と言えるのか」「国籍は韓国でも精神が日本人だ」といった厳しい声が上がったため、以降の韓国マスコミへの対応は英語で行っているとされる。

重光宏之は、ロッテグループの歴史における後継者争いの当事者として、また日韓を股にかける企業グループにおいて、その存在が注目され続けている。

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