重合度

重合度 (Degree of Polymerization, DP)

重合度（じゅうごうど、英語: Degree of Polymerization; DP）とは、ポリマーやオリゴマーといった高分子化合物に含まれる、モノマー（単量体）の単位が鎖状にいくつ連結しているかを示す指標です。この値は、高分子の分子の大きさを示すとともに、その物理的な性質（例えば、強度や融点）に深く関わるため、高分子化学において極めて重要な概念とされています。

一般的に、重合度はポリマー鎖を構成するモノマー単位の総数として定義されます。特に、合成ポリマーは様々な長さの分子鎖の混合物であることがほとんどであるため、通常は平均値として扱われます。代表的な指標である数平均重合度（DPnまたはXnで表されます）は、ポリマーの数平均分子量（Mn）をモノマー単位一つあたりの分子量（M0）で割ることで計算されます。

$$ DP_n \equiv X_n = \frac{M_n}{M_0} $$

工業的に生産されるポリマーでは、多くの場合、数千から数万といった非常に高い重合度が必要とされます。この数値は、個々のポリマー分子の長さを示すのではなく、ポリマーサンプル全体に含まれるモノマー単位数の平均値を示すものです。

ただし、コポリマーのように複数の種類のモノマーから構成されるポリマーの場合、専門書によっては、DPを「繰り返し単位」の数として定義することがあります。この繰り返し単位は、必ずしもモノマー単位の数と一致しません。例えば、ナイロン66はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンという2種類のモノマーから構成されますが、繰り返し単位はこれら2つのモノマー由来の部分が結合したものです。もし1000個のモノマー単位からなるナイロン66鎖があるとすると、IUPACの定義（モノマー単位数）では重合度は1000となりますが、繰り返し単位の数で定義する場合は、繰り返し単位一つが2つのモノマー単位を含むため、重合度は500となります。文脈によって定義が異なる可能性がある点に注意が必要です。

高分子の合成方法である重合反応の種類によっても、重合度の制御や達成される重合度に違いが見られます。

逐次重合と重合度

逐次重合では、モノマー分子が次々と反応して鎖が成長していきます。このタイプの重合で高い重合度（すなわち高い分子量）を達成するためには、モノマーの転化率（反応したモノマーの割合、p）を非常に高くする必要があります。これはカロザースの式として知られています。

$$ \bar{X}_n = \frac{1}{1-p} $$

この式が示すように、例えば数平均重合度を100にしたい場合、モノマー転化率は99%に達していなければなりません。わずかな未反応モノマーが存在するだけでも、目標とする高い重合度を達成するのが難しくなります。

連鎖重合と重合度

一方、フリーラジカル重合などの連鎖重合では、逐次重合の場合とは異なり、反応のごく初期から非常に長いポリマー鎖が生成されます。カロザースの式は連鎖重合には直接適用されません。連鎖重合では、反応時間を長くしてもポリマー全体の収率は増加しますが、すでに生成したポリマー鎖の平均分子量（重合度）にはほとんど影響を与えません。

連鎖重合における重合度は、「動力学的鎖長」と関連がありますが、いくつかの要因によって値が異なってくることがあります。動力学的鎖長とは、開始剤一つあたりに反応したモノマーの平均数です。しかし、例えば、成長中の2つのラジカル鎖が結合して停止する（再結合）場合、最終的なポリマー鎖の重合度は動力学的鎖長のほぼ2倍になる可能性があります。また、モノマー分子や溶媒、あるいは添加剤に成長末端が移動する「連鎖移動」反応が起こると、既存のポリマー鎖の成長が止まり、新しいポリマー鎖の開始点が生じるため、全体の平均重合度は低下する傾向があります。

重合度は、同じ組成を持つポリマーであっても、その物理的な性質に大きな影響を与えます。一般的に、重合度が高くなるにつれて、ポリマーの溶融温度が上昇し、引張強度や弾性率といった機械的な強度が向上する傾向が見られます。これは、分子鎖が長くなるほど、分子間の絡み合いが増し、二次結合（ファンデルワールス力など）による相互作用が強くなるためです。しかし、非常に高い重合度（例えば分子量10万以上）になると、それ以上の重合度増加が、軟化温度、密度、引張強度などの物性に対して大きな変化をもたらさなくなる、いわゆる「飽和」の現象が見られるのが一般的です。

前述のように、合成ポリマーは通常、異なる重合度を持つ分子の集まり、すなわち分子量分布を持っています。そのため、ポリマー全体の重合度を表す際には、平均値が用いられます。最も一般的に使われるのは、数平均重合度（Xn）と重量平均重合度（Xw）です。

数平均重合度は、ポリマーサンプル中の各分子の重合度を、その分子の数（モル分率）に基づいて平均したものです。これは、溶液の浸透圧を測定することで得られる数平均分子量から計算されることが多いです。

一方、重量平均重合度は、各分子の重合度を、その分子の重量（重量分率）に基づいて重み付けして平均したものです。重量平均重合度は、溶液中でのポリマー分子による光の散乱（レイリー散乱）を測定することで得られる重量平均分子量から計算されます。重量平均は、分子量の大きい分子の影響をより強く反映する傾向があります。

これらの平均重合度やその分布を理解することは、ポリマー材料の特性を予測し、制御するために不可欠です。重合度は、ポリマーの合成から物性評価、そして最終的な用途に至るまで、その性質を決定づける根源的な指標と言えるでしょう。

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