重要美術品等ノ保存ニ関スル法律

重要美術品等ノ保存ニ関スル法律：概要とその後

1933年（昭和8年）に制定された「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」は、日本の美術工芸品の海外流出を防ぐことを目的とした法律でした。当時、旧国宝保存法では保護対象となっていなかった美術品などを対象に、海外への持ち出しを規制するものでした。文部省（当時）が所管し、5つの条文から構成されていました。

法律の目的と対象

この法律の主な目的は、歴史的・美術的に重要な価値を持つ美術工芸品の海外流出を防ぐことにありました。「歴史上又ハ美術上特ニ重要ナル価値アリト認メラルル物件」と定義され、絵画、彫刻、建造物、文書、典籍、書跡、刀剣、工芸品、考古学資料などが対象とされました。ただし、現代作家の作品や、制作後50年以内、輸入後1年以内のものは除外されました。

海外への持ち出しを希望する者は、文部大臣（当時）の許可を得る必要があり、許可が必要な物件は「重要美術品」として官報で告示されました。

文化財保護法施行後の扱い

1950年（昭和25年）に文化財保護法が施行されると、重要美術品等ノ保存ニ関スル法律は廃止されました。しかし、廃止時点ですでに重要美術品として認定されていた物件については、文化財保護法附則第4条の規定により、法律の効力は維持されることになりました。

その後、文化庁（当時、文化財保護委員会）がこれらの物件を所管することとなり、文化財保護法の規定に基づき、重要美術品の保護が継続されています。

重要な条文

廃止された法律ではありますが、既に認定済みの重要美術品については、以下の条文が現在も効力を持ちます。文化財保護法附則第4条第1項に基づき、現在の制度に読み替えられて適用されています。

第一条: 重要美術品の輸出入には文化庁長官の許可が必要（ただし、現代作品や制作・輸入後間もないものは除く）。
第二条: 輸出入許可が必要な物件は文化庁長官が認定し、官報で告示。所有者にも通知。
第三条: 許可申請を却下した場合、1年以内に認定を取り消す規定。
第四条: 認定、取消、所有者変更に関する手続きは命令で定める。
* 第五条: 無許可での輸出入は罰則の対象。

また、同法附則第4条第2項、第3項では、文化審議会による調査審議や、関連規定の準用などが規定されています。

結論

重要美術品等ノ保存ニ関スル法律は廃止されましたが、その精神と、既に認定された重要美術品の保護という役割は、現在も文化財保護法によって引き継がれています。この法律は、日本の美術工芸品の保護の歴史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。 歴史的経緯と、現在も続く重要美術品の保護の仕組みを理解することは、日本の文化遺産保護のあり方を考える上で重要です。 この法律の制定から廃止、そして現在の制度への移行を理解することで、日本の文化財保護政策の変遷をより深く理解することができます。

もう一度検索