野ざらし紀行

『野ざらし紀行』は、江戸時代中期の俳人、松尾芭蕉によって著された紀行文であり、芭蕉にとって最初の紀行作品として知られています。貞享元年（1684年）8月、芭蕉は門人の苗村千里を伴い、深川の芭蕉庵を出発し、およそ8ヶ月に及ぶ旅に出ます。

旅程は東海道を西へ向かい、伊勢、伊賀、大和といった地を巡ります。その後は単独で吉野を訪れ、9月下旬には美濃大垣に滞在。さらに桑名、熱田、名古屋を経て、故郷である伊賀上野へと帰郷し、そこで年を越します。年が明けた春には再び旅立ち、大和路をたどって京都へ。そして近江路を経由して江戸へと戻るという道のりでした。

この紀行文は、単なる旅の記録に留まらず、各地での人々との交流や、句作の様子も克明に記されています。初稿本の巻末には、各地で催された句会での句が「酬和の句」として抄録されており、句集としての性格も持ち合わせています。芭蕉自身による再稿、三稿を経て、21枚の絵を添えた画巻本も作成され、門人の中川濁子による清書画巻も現存しています。

『野ざらし紀行』には、「猿を聞人捨子に秋の風いかに」のような、従来の俳句の形式にとらわれない破調の句も見られます。一方で、「山路来て何やらゆかしすみれ草」のような、平明で親しみやすい句も詠まれており、芭蕉が従来の『虚栗』調からの脱却を目指していたことが窺えます。

『野ざらし紀行』が初めて刊行されたのは、元禄11年（1698年）に издательстваされた『泊船集』に所載されたものが最初です。この作品は、芭蕉の初期の旅の様子や、俳句に対する姿勢の変化を知る上で貴重な資料となっています。

この紀行文は、芭蕉の人間性や芸術観に触れることができるだけでなく、当時の日本の風景や人々の生活を知る上でも重要な資料です。芭蕉の旅の足跡を辿りながら、その心情や句に込められた思いを感じ取ることができるでしょう。

芭蕉はどのような思いでこの旅に出たのでしょうか。そして、どのような景色を見て、どのような人々と出会い、どのような句を詠んだのでしょうか。その答えは、『野ざらし紀行』の中に 숨겨져 있다.

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