野中広務 差別と権力

『野中広務 差別と権力』は、ジャーナリスト魚住昭が、政界の異端児とも呼ばれた野中広務の生涯を丹念に描き出したノンフィクション作品です。2004年に講談社から出版され、同年の講談社ノンフィクション賞を受賞しました。

本書は、野中広務という一人の政治家の生い立ちから、その権力掌握の過程、そして彼が「影の総理」と呼ばれるまでの軌跡を、魚住昭による綿密な取材に基づいて伝記的にまとめています。読者は、野中がどのような環境で育ち、いかにして政治の世界で頭角を現し、そしてどのような思想と戦略をもって権力の中枢に近づいていったのかを知ることができます。

本書が特に注目を集めたのは、元内閣総理大臣である麻生太郎が、野中広務に対して差別的な発言をしたとされる問題を扱った点です。本書によれば、麻生の発言に対し、野中が自民党総務会の席で公然と抗議したとされています。この一件は、衆議院総務委員会などでも取り上げられ、大きな政治問題となりました。このエピソードを通じて、野中広務という人物の信念や、権力に対する姿勢が鮮明に浮かび上がります。

本書は、単なる伝記に留まらず、日本の政治における差別問題や、権力構造の深層に迫る作品としても評価されています。野中広務という一人の政治家の生き様を通して、日本の政治の光と影を描き出し、読者に深い問いを投げかけます。

書籍情報：
魚住昭 『野中広務 差別と権力』、講談社、2004年6月。ISBN 978-4062123440
講談社文庫（元外交官・作家佐藤優との対談追加、佐高信 解説）、2006年5月。ISBN 978-4062753906

文庫版には、元外交官で作家の佐藤優との対談が追加され、佐高信による解説も収録されています。これにより、野中広務という人物に対する多角的な視点と理解が深まる構成となっています。

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