野口武徳

野口 武徳の生涯と業績

生い立ちと教育

野口 武徳（のぐち たけのり）は、1933年5月26日に東京市牛込区の市ヶ谷富久町で生まれました。育った家庭環境は、父が東京府立第六中学校（現東京都立新宿高校）の武道教官であったため、教育と武道の影響を受けながら成長しました。彼の人生は、父親の異動によって朝鮮半島に転居することから始まりました。終戦を京城（現在のソウル）で迎えた後、父の故郷である長崎県に引き揚げ、長崎県立佐世保北高校を卒業しました。

野口は1958年に東京学芸大学を卒業し、その後1965年には東京都立大学大学院社会科学研究科の博士課程を満期退学しました。この時期、彼は社会人類学を専攻し学びを深めました。

職歴

彼は1965年に成城大学の専任講師に就任し、1967年には助教授、1975年には教授に昇進しました。当時の文芸学部文化史学科において、彼は多くの学生に影響を与えました。独自の視点から民俗学や社会人類学の重要性を教え、多くの後進を育てる役割を果たしました。

研究活動

彼の研究は多岐にわたり、特に漁民の生活や文化を中心に多くの調査を行いました。1953年から1957年にかけては、長崎県崎戸の家船を対象とした調査を行い、1961年からは沖縄の池間島や糸満の漁民に着目しました。さらに1969年から1979年の間には、フィリピンのパラワン島の漁民や、シンガポール、マレーシアにおける近代化に関する研究を進めました。

1980年から1981年にかけては、フィリピン、ボルネオ、マレーシア、タイの漂海民を調査対象にし、底辺文化の魅力と問題に深く迫る研究を展開しました。彼の研究の成果は、1981年に「我が国海上移動漁民の社会人類学的研究 その陸地定着・分村設立過程」としてまとめられ、筑波大学より文学博士を授与されました。

著書と業績

野口の著作には、多くの注目すべきタイトルが含まれています。1972年には『沖縄池間島民俗誌』、同年には『沖縄心の美』が出版されました。1980年には『南島研究の歳月 沖縄と民俗学との出会い』が発表され、沖縄に関する民俗学的な理解を深める作品となりました。また、全12巻からなる『四季の行事シリーズ紙芝居』や、1987年には『漂海民の人類学』など、多岐にわたる著書を残しました。

共編著では『日本人のしつけ その伝統と変容』や、シリーズとして編纂された『現代日本民俗学』があり、他にもさまざまな分野の研究に携わりました。野口はその学識を生かし、特に東南アジアにおける漂海民についての理解を深めるとともに、多くの研究者に影響を与えたのです。

最期と影響

残念ながら、野口武徳は1986年1月4日に52歳でこの世を去りましたが、彼が残した学問的遺産は今なお多くの研究者に影響を与え続けています。彼の研究は、社会人類学及び民俗学の分野における貴重な資料として、未来の学問的発展にも寄与していることでしょう。

もう一度検索