家船

家船についての詳細

概要

家船（えぶね）は、日本の近世から近代にかけて活動していた漂流漁民の集団を指し、彼らは特異な生活様式と漁業方法で知られています。文化的には賤民とされ、社会的に低い地位を占めていましたが、その生活様式は独自のものでした。

起源と構成

家船は古代海部の系統を引く水軍の末裔とも言われますが、具体的な起源については詳細が定かではありません。彼らは数艘から数十艘の船舶を形成し、「～家船」と称して集団行動を行いました。彼らの本拠地を中心に周辺海域を漂流し、主に潜水漁や鉾を用いて魚介類や鮑を採取したり、交易を行ったりしていました。

漁業と交易

家船の漁業は、主に周囲の港で物々交換を行うことによって成り立っていました。漁獲した魚介類は、約1週間から10日ごとに近くの港で市場に水揚げされ、交易が行われました。特に瀬戸内海の三津の朝市では、家船からの漁獲品を見かけることができ、戦後もしばらく続いていたと言われています。

湯治の文化

別府温泉地域では、家船で宿泊しながら温泉を楽しむ「湯治」の習慣が存在しました。これには持ち舟を利用し、戦後もしばらく活発に行われていました。春になると、波止場には約100艘の舟が係留され、「湯治舟」と呼ばれ、地域の春の風物詩となっていました。

地理的分布

家船の主な根拠地は西九州及び瀬戸内海沿岸にあり、西彼杵半島や五島列島に多く見られます。その地域の女性には特定の風習があったとされ、独自の文化が形成されていました。

幕藩体制以降の変遷

幕藩体制の成立後、家船に対する認識が変わり、藩からの公認を受けるために鮑や漁獲物の上納が必要とされました。また、海上警備を担う役割もあったため、政府との関係が強化されました。明治維新以降は、納税義務化や徴兵制、義務教育の施行に伴い、政府による規制が厳しくなり、最終的に多くの家船が陸上に定住を余儀なくされるようになりました。

現代の影響

昭和40年代には、家船が海上生活から陸上生活へとシフトし、徐々に消滅していったと言われています。しかし、東京都の佃、月島、勝どき周辺には、埋め立てが進む前には家船が多く見られ、約1万人に達する規模を誇っていました。こういった地域では、住民のために水上会館や水上学校が設立され、水上警察署も設置されるなど、独自の社会構造が形成されていました。

終焉と変遷

しかし、近年では災害や都市開発に伴う立ち退き、老朽化により家船の数は減少しました。特に1980年代には、艀の老朽化が進み、ほとんど見ることができなくなりました。このように、家船は日本の水上生活の一形態として長い間存在していましたが、現在ではその姿を留めることが難しくなっています。

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