野呂景義

野呂 景義について

野呂景義（のろ かげよし）は、日本の冶金学者であり、東京帝国大学の教授として知られています。彼は1854年10月17日に愛知県名古屋の橦木町に生まれました。野呂は日本の近代製鉄業に多大な貢献をし、特に「日本の冶金学の父」と称されています。彼の業績は、戦後の日本の鉄鋼業界における技術指導にとどまらず、教育や業界団体の設立にも及びました。

学歴と教育

野呂は愛知英語学校を経て開成学校に進学し、1882年には東京帝国大学の理学部にて採鉱冶金学科を卒業します。卒業後、母校で助教授として教鞭をとりつつ、当時の著名な教授であるクルト・ネットーの下でさらに技術を学びました。彼は1891年には、文部省から日本初の工学博士号を授与され、この年に産業界に大きな足跡を残すこととなります。

海外留学と教授就任

1885年から1889年までの間、野呂はヨーロッパに留学し、ロンドン大学で機械工学や電気工学を学んだ後、ドイツのフライベルク鉱山大学で鉄の冶金学に専念しました。この留学経験は、帰国後の彼の研究や教育に大きな影響を与え、特に1889年からは東京帝国大学工科大学の教授に就任し、日本初期の鉄鋼業界での人材育成に尽力しました。

鉄鋼業界への影響

野呂はまた、農商務省の技師としても活動し、松方正義や榎本武揚と協力して官営製鉄所の建設に取り組みました。しかし、東京市水道鉄管事件により1896年以降は公職を辞任することとなります。日本初の官営製鉄所である釜石製鉄所は、1880年に操業を開始し、初期には木炭不足や技術力不足から閉鎖されることになりました。この再建に際し、野呂は1894年に顧問として迎えられ、初のコークス炉を利用した銑鉄生産に成功しました。

1901年には官営八幡製鉄所がドイツの技術を基に創業し、その過程で野呂が呼ばれて様々な調査を行い、改良に貢献することとなります。彼の技術指導により、八幡製鉄所の高炉は連続稼働を果たし、2140日間にわたって安定的に出銑が実現しました。

日本鉄鋼協会の設立

社会貢献に取り組む一方で、野呂は1890年に愛知教育博物館の設立に寄与します。1915年には日本鉄鋼協会を設立し、初代会長に選ばれることで、日本の鉄鋼業界の発展に寄与しました。この協会は、毎10年ごとに業界の功労者を表彰する制度を設け、1975年には「野呂賞」と名付けられた表彰制度も設立されました。

終焉とLegacy

野呂は1922年3月から体調を崩し療養生活を送っていましたが、1923年9月1日の関東大震災で日本鉄鋼協会の会館が被災したとの知らせを受けました。彼はその数日後の9月8日、静かにこの世を去ることとなったのです。彼の業績は、今日の日本の鉄鋼業界にも深く根付いており、未だ多くの人々に影響を与え続けています。

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