野外入浴セット2型

野外入浴セット2型について

野外入浴セット2型は、陸上自衛隊の需品科が運用する、屋外での入浴を可能にするための装備です。災害派遣時など、入浴施設が不足する状況下で、隊員や被災者の衛生環境を保ち、心身のリフレッシュを支援する重要な役割を担っています。

導入の背景

導入のきっかけは、1985年の日本航空123便墜落事故における災害派遣でした。この際、製造会社からのボランティア提供で試用した結果、隊員の士気維持に非常に有効であることが確認され、正式に採用されました。また、1959年の伊勢湾台風における災害派遣の際、急遽作った簡易風呂が好評だったことも、1970年の採用決定を後押ししたという説もあります。

運用と展開

野外入浴セット2型は、73式大型トラックで目的地まで牽引・展開されます。運用は、方面後方支援隊補給中（大）隊のほか、師団後方支援連隊や旅団後方支援隊、離島警備隊の補給隊などが担当します。阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大規模災害においても、自衛隊員だけでなく被災者にも利用され、その能力を発揮しました。

特徴と構成

この入浴セットは、主に以下の要素で構成されています。

トレーラー搭載器材：ボイラー、揚水ポンプ、発電機などが搭載されています。
野外浴槽：簡易的な浴槽で、複数人が同時に入浴できます。
シャワースタンド：シャワー設備も備えています。
業務用天幕：入浴スペースを覆う天幕。
10,000リットル貯水タンク：大量の水を貯めておくことが可能です。
その他付属品：照明具、すのこ、シート、脱衣かご、棚など、入浴に必要な様々な付属品が含まれています。

能力

野外入浴セット2型は、1時間あたり5.4トンの温水を供給できます。湯沸かし時間は約45分で、1日あたり約1200人の入浴を可能にします。収容人数は約30人で、複数人が同時に利用できます。

各地の「湯」

運用部隊ごとに、ユーモアを交えたオリジナルの暖簾が作られ、入り口に掲げられるのが特徴です。暖簾には、駐屯地の所在地にちなんだ名前が付けられています。例えば、以下のような名称が使用されています。

第101補給大隊（桂駐屯地）：京の湯
第102補給大隊（仙台駐屯地）：伊達の湯
第103補給大隊（霞ヶ浦駐屯地）：東の湯
第104補給大隊（島松駐屯地）：ふくろうの湯
第105補給大隊（目達原駐屯地）：葉隠乃湯
第1後方支援連隊補給隊（練馬駐屯地）：練馬の湯
第2後方支援連隊補給隊（旭川駐屯地）：大雪の湯
第3後方支援連隊補給隊（千僧駐屯地）：六甲の湯
第4後方支援連隊補給隊（福岡駐屯地）：博多山笠湯・博多美人湯
第5後方支援隊補給中隊（帯広駐屯地）：熊乃湯
第6後方支援連隊補給隊（神町駐屯地）：花笠の湯
第7後方支援連隊補給隊（東千歳駐屯地）：すずらん湯
第8後方支援連隊補給隊（北熊本駐屯地）：火の国の湯
第9後方支援連隊補給隊（青森駐屯地）：うみねこの湯
第10後方支援連隊補給隊（春日井駐屯地）：尾張の湯
第11後方支援隊補給中隊（真駒内駐屯地）：さっぽろ藻岩の湯
第12後方支援隊補給中隊（新町駐屯地）：神流（かんな）の湯
第13後方支援隊補給中隊（海田市駐屯地）：もみじ湯
第14後方支援隊補給中隊（善通寺駐屯地）：弘法の湯
第15後方支援隊補給中隊（那覇駐屯地）：美ゅら島の湯
需品教導隊（松戸駐屯地）：松戸の湯
対馬警備隊後方支援隊補給小隊（対馬駐屯地）：やまねこの湯
奄美警備隊後方支援隊補給小隊（奄美駐屯地）：つむぎの湯
宮古警備隊後方支援隊補給小隊（宮古島駐屯地）：ゆいまーるの湯
八重山警備隊後方支援隊補給小隊（石垣駐屯地）：やいま乃湯

製造会社

野外入浴セット2型は、以下の企業によって製造されています。

伸誠商事
* 小村工業

登場作品

この装備は、アニメ『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の第4話に登場しました。異世界に進出した自衛隊が運用しており、「本日オープン！ 特地の湯」と書かれた幟が印象的でした。

まとめ

野外入浴セット2型は、災害派遣時において自衛隊員と被災者の生活を支える上で、非常に重要な役割を担っています。その高い機能性と、各地で親しまれている「湯」の名称は、過酷な状況下においても人々の心を温める存在です。

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