野尻湖ナウマンゾウ博物館

野尻湖ナウマンゾウ博物館

長野県上水内郡信濃町にある野尻湖ナウマンゾウ博物館は、太古の時代にこの地に生息していたナウマンゾウや、旧石器時代の人々の暮らしに焦点を当てた博物館です。

設立の背景

野尻湖の西岸一帯、特に湖底や湖畔、そして周辺の丘陵地帯には、旧石器時代から縄文時代が始まる頃にかけて形成された多くの遺跡が点在しており、これらはまとめて「野尻湖遺跡群」と呼ばれています。

博物館が誕生するきっかけの一つは、1948年に湖底に近い立が鼻遺跡のあたりで、地元の旅館経営者が偶然発見したナウマンゾウの臼歯でした。その独特な形から、当初は「湯たんぽの化石」とも呼ばれていたといいます。さらに、1953年には、別の地元住民が杉久保遺跡の付近で集めていた石器の中に、旧石器時代のものがあることが芹沢長介氏らによって確認されました。これらの発見を契機に、野尻湖の湖底を中心とした本格的な発掘調査が開始されることになります。

発掘調査と博物館の役割

野尻湖におけるナウマンゾウの化石や旧石器時代の遺跡に関する発掘調査は、1962年から現在に至るまで続けられています。この調査の大きな特徴は、研究者だけでなく、多くの一般市民がボランティアとして参加する、ユニークな協同発掘の形式で行われている点です。

野尻湖ナウマンゾウ博物館は、こうした長年にわたる発掘調査で得られた貴重な成果を、現地で適切に保管・公開することを主な目的として設立されました。また、単なる展示施設としてだけでなく、約5万年前という氷河期から現在までの野尻湖周辺の自然環境の変遷や、そこに生息していた動植物、そして旧石器時代の人類の活動について研究を進め、その成果を広く伝える役割も担っています。

博物館は、調査で検出された全ての出土品を野尻湖のほとりで大切に守り、一般に公開することで、地域の歴史や自然を学ぶ拠点となっています。

沿革

1984年7月1日、「野尻湖博物館」として開館しました。開館記念式典には多くの関係者が集まり、一般公開初日には多数の来館者がありました。
1996年には、現在の名称である「野尻湖ナウマンゾウ博物館」に改称しました。
2009年7月26日には、開館以来の累計入場者数が150万人を突破し、多くの人々に親しまれていることが示されました。

展示とシンボル

博物館の2階にある常設展示室では、野尻湖の形成過程や、湖底から見つかったナウマンゾウの骨格化石、当時の人々が使っていた石器や骨器などが展示されています。来館者は、これらの展示を通じて、氷河期という遠い昔の世界や、厳しい自然の中で生き抜いた古代の人々の知恵に触れることができます。

博物館のシンボルマークは、1973年の第5次発掘調査で隣り合って発見された、ナウマンゾウの立派な牙（第2門歯）と、ヤベオオツノジカの掌を広げたような形の大きな角をデザインしたものです。これらの化石は、発見された時の様子から「月と星」という愛称で呼ばれており、博物館の象徴として親しまれています。

利用案内

開館時間: 通常期は午前9時から午後5時まで。冬季は午前9時30分から午後3時45分までとなります。
休館日: 主に5月、6月、9月、10月、11月の月末日および年末年始が休館日となります。

アクセス

自家用車: 上信越自動車道の信濃町インターチェンジからは、車で約5分と非常にアクセスしやすい場所にあります。
* 公共交通機関: しなの鉄道黒姫駅からタクシーを利用するのが一般的です。ただし、夏季（7月中旬から10月中旬頃）には、季節限定で博物館近くまで運行されるバスも利用可能です。

この博物館は、野尻湖の自然史と、古代の生物や人類の歴史を結びつける貴重な学びの場を提供しています。

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