野島廣司

野島廣司（のじま ひろし、1951年1月12日生まれ）は、日本の実業家です。家電量販店チェーンを展開する株式会社ノジマの代表取締役社長として、長年にわたり同社を率いてきました。神奈川県相模原市に生まれ、中央大学附属高等学校を経て、1973年3月に中央大学商学部を卒業しています。

彼のルーツは、父親がサラリーマンから転身して開業した電気店にあります。廣司氏が大学生の頃に始まったこの店は、後に株式会社ノジマの前身となります。幼い頃、店に忙しい両親にあまり構ってもらえなかった経験から、「電器屋」というものに一時的にネガティブな感情を持っていた時期もあったと語られています。しかし、大学を卒業すると、迷うことなく父親が営む有限会社野島電気商会に入社し、経営者としての道を歩み始めました。

入社後、自身のオーディオ好きが高じて、コンポーネントオーディオの専門売場を新設することを提案しました。当時の社長であった母親は、田舎町での高額商品の需要を懸念し、この提案に最初は難色を示したといいます。しかし、野島氏の熱意と市場を読む力によって売場は成功を収め、わずか5年後には単品コンポの売上で神奈川県内でも有数の成績を上げるまでに成長しました。このエピソードは、彼の事業家としての才能を示す原点とも言えます。

株式会社ノジマでは、1973年の入社以来、順調に昇進を重ねました。取締役、専務取締役を経て、1994年7月には代表取締役社長に就任。その後、2006年4月からは取締役兼代表執行役会長CEOとして、さらに広範な視点から経営戦略を指揮しました。そして、2007年6月には再び代表執行役会長兼社長となり、現在に至るまでトップとしてノジマグループを牽引しています。この間、ノジマグループ内外の様々な企業の役員も歴任しており、携帯電話販売事業を行うアイ・ティー・エックス株式会社の代表取締役社長や、異業種であるスルガ銀行株式会社の社外取締役副会長など、多岐にわたる経験を積んでいます。これにより、多角的な視点と幅広いネットワークを持つ経営者としての地位を確立しています。

私生活では、読書やゴルフを趣味としており、知的好奇心とリフレッシュの時間を大切にしているようです。家族については、弟の野島隆久氏も実業家として知られ、かつてノジマの経営方針を巡って意見の相違があり、その後独立してピーシーデポコーポレーションを創業しています。一方、株式会社ノジマで副社長を務める野島亮司氏は彼の息子にあたり、親族が事業に関わっている側面もあります。

教育分野への貢献も行っており、中央大学が主催する「野島記念Business Award」は、彼の篤志と「ビジネス界で活躍する若者を増やしたい」という強い思いを受けて、2007年から開催されています。これは、学生の革新的なビジネスアイデアを支援し、将来を担う人材の育成に貢献することを目的としています。

経営者としての手腕や哲学は、メディアでも注目されています。テレビ東京系列の経済番組、日経スペシャル『カンブリア宮殿』に出演した際には、独自の「感動接客」など顧客第一主義の経営方針や、過去の困難を乗り越えてきた経験などが紹介され、多くの反響を呼びました。また、自身の豊富な経験や経営哲学をまとめた著書も複数出版しています。代表的なものとしては、『失敗のすすめ 「教える」だけでは人も企業も育たない』（ダイヤモンド社）や『将来を本気で考える君へ 人生100年時代の就活相談』（ダイヤモンド社）などがあり、これらの著作を通じて、後進の育成やビジネスパーソンへの啓発活動にも力を入れています。

野島廣司氏は、一代で築き上げた事業を受け継ぎ、それをさらに発展させてきた経営者です。家電量販という激戦市場において、独自のサービスや戦略で企業を成長させ続けるその手腕は高く評価されており、日本の小売業界における重鎮の一人と言えるでしょう。彼のリーダーシップのもと、株式会社ノジマは今後も変化の激しい市場において挑戦を続けていくことでしょう。

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