野戦憲兵 (ドイツ)

ドイツ野戦憲兵の歴史

誕生と第一次世界大戦

19世紀初頭、ナポレオン戦争の影響下、ザクセン王国を始めとするドイツ諸国では、フランスの憲兵隊をモデルとした地方警察部隊が誕生しました。プロイセン王国では、陸軍出身の兵士によって編成された国家憲兵が、平時は内務省、戦時は陸軍省の指揮下で活動しました。この国家憲兵の一部が、戦争時に「野戦憲兵隊(Feldgendarmerie)」として編成されました。第一次世界大戦時には33個中隊から始まり、終戦までに115個中隊にまで拡大しましたが、敗戦後、解体されました。

ナチス時代

ヒトラー政権下で野戦憲兵隊は再編成され、警察権限が強化されました。厳しい選抜試験を経て、歩兵としての訓練に加え、法令知識や護身術などの教育を受けた隊員が選抜されました。各師団に配置され、軍団単位で活動、秘密野戦警察や親衛隊とも連携して活動しました。

彼らの任務は、前線や占領地の治安維持、脱走兵の処罰、パルチザンの掃討など多岐に渡りました。しかし、戦争犯罪への関与や、撤退中の兵士への残虐行為などが広く知られており、「鎖付きの犬ども(Kettenhunde)」、「英雄を盗む者(Heldenklauer)」といった蔑称で呼ばれることもありました。

親衛隊も独自の「親衛隊野戦憲兵隊(SS-Feldgendarmerie)」を保有しており、陸軍の野戦憲兵以上に悪名高く、「首狩り族(Kopfjäger)」と呼ばれていました。ユダヤ人対策にも関与したとされています。

戦況悪化に伴い、1944年には国防軍最高司令部直属の「憲兵軍団(Feldjägerkorps)」が新設されました。彼らは、国防軍全体、さらには親衛隊の軍規維持や「敗北主義者」とみなされた者たちの処罰を担いました。

戦後

第二次世界大戦後、西ドイツの連邦軍では、当初「軍事警察(Militärpolizei)」という名称が予定されていましたが、地方自治体からの反発により、「野戦猟兵(Feldjäger)」という名称に変更されました。東ドイツの国家人民軍では、ソ連軍にならって独立した憲兵組織は設置されませんでした。占領下ドイツでは、一時的に連合軍を支援する組織として野戦憲兵の一部が存続しましたが、1946年には完全に解体されました。

組織と規模

野戦憲兵隊は陸軍総司令部直属で、各軍上級司令部(AOK)に大隊が配置されました。大隊はさらに小隊、分隊に細分化され、必要に応じて前線にも配置されました。典型的な小隊は将校3名、下士官41名、兵卒20名から構成されていました。野戦憲兵隊単独では軍紀維持が困難だったため、陸軍/国防軍警邏隊、交通整理大隊などの補助組織も存在しました。

まとめ

ドイツの野戦憲兵は、その歴史の中で、治安維持や軍紀粛正という役割を果たしてきましたが、同時に戦争犯罪への関与など、負の歴史も背負っています。その存在は、ドイツ軍の歴史、ひいては20世紀ヨーロッパの歴史を考える上で重要な要素となっています。彼らの役割と行動は、現代においても議論と考察を呼び続けるでしょう。

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