野望の系列

野望の系列：アメリカ政治の闇を描く重厚なドラマ

アレン・ドルーリーの政治小説『野望の系列』を原作とする本作は、1962年に公開された政治スリラー映画です。ピューリッツァー賞を受賞した原作小説と同様に、アメリカ政治の暗部を鮮やかに描き出し、公開当時から高い評価を得ています。

物語の中心は、大統領が指名した国務長官候補、ロバート・レフィングウェルの承認をめぐる上院での激しい攻防です。レフィングウェルは、元学者で革新的な人物ですが、その過去に共産主義との関与疑惑が浮上します。

この疑惑を巡り、上院議員たちの思惑が複雑に絡み合います。レフィングウェルに恨みを持つベテラン議員クーリーは、徹底的な反対姿勢を貫きます。一方、与党院内総務マンソンは、大統領の意向を受け、レフィングウェルの承認に向けて奔走します。

聴聞会では、レフィングウェルの過去が徹底的に検証されます。精神を患う証人の証言が、レフィングウェルの嫌疑を晴らすかに思われましたが、そこには隠された真実がありました。レフィングウェルは、かつて共産主義に傾倒していた事実を大統領に告白し、自ら候補を辞退しようとしますが、大統領の強い意向は変わりません。

クーリーは、執拗な調査によって、レフィングウェルと過去に共産主義者と関与していた人物が、財務省高官フレッチャーであることを突き止めます。この事実を告発されたフレッチャーは、小委員会の委員長アンダーソンに真実を伝え、事態はさらに複雑化します。

一方、レフィングウェル支持派の若手議員アッカーマンは、アンダーソンが過去に抱えていた秘密を暴露することで、アンダーソンを追い詰めます。正義感の強いアンダーソンは、レフィングウェルの偽証と、自身の過去との板挟みになり、悲劇的な最期を迎えます。

最終的に、小委員会はレフィングウェルの承認を決定します。しかし、上院本会議ではクーリーの反対が続き、マンソンの提案で自由投票が行われることに。結果は、賛成と反対が完全に同数となり、副大統領ハドソンの1票にかかってしまいます。ところが、大統領の急死という衝撃的な出来事が発生し、ハドソンは棄権。レフィングウェルの国務長官就任は否決されます。

この結果は、アメリカ政治における権力の脆さと、個人の信念と野望がもたらす悲劇的な結末を象徴しています。大統領の急死により、アメリカ政治の未来は不透明なまま幕を閉じます。

映画版では、ヘンリー・フォンダ、チャールズ・ロートン、ドン・マレー、ウォルター・ピジョンなど、実力派俳優たちが、それぞれの役柄を熱演。彼らの演技により、複雑な人間模様と、アメリカ政治の生々しさが画面から伝わってきます。

『野望の系列』は、単なる政治サスペンスにとどまらず、権力、野心、正義、そして人間の弱さといった普遍的なテーマを深く掘り下げた傑作です。アメリカ政治に興味のある方だけでなく、人間ドラマとしても十分に楽しめる作品と言えるでしょう。Rotten Tomatoesでは、批評家の評価も高く、その高い完成度が認められています。

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