野村徳七 (二代)

第二代野村徳七：野村財閥を築いた実業家の生涯

野村徳七(1878-1945)は、日本の近代経済史において重要な役割を果たした実業家です。初代野村徳七の長男として生まれ、幼名は信之助。弟には野村元五郎がいます。彼は、家業である両替商を継承するだけでなく、それをはるかに超える規模の事業を展開し、野村財閥の基礎を築きました。

大阪市立商業学校（現在の大阪市立大学の前身校）に入学するも、病気のため中退。その後、八千代商店（後の八千代証券）での修業を経て、家業である野村商店を継承します。当初は両替商でしたが、公債や株式取引へと事業を拡大。1907年、初代徳七の隠居に伴い、家督と名を継承し、弟らと共に野村商店を経営しました。

徳七は、近代的な経営手腕でも知られています。当時一般的だった丁稚制度に変わる形で、学校教育を受けた人材の積極的な登用や、店員への背広着用、電話の複数導入、女子店員の採用など、画期的な経営改革を行いました。日露戦争や第一次世界大戦といった激動の時代を巧みに乗りこなし、莫大な利益を獲得。その資金を基に、海外事業にも積極的に進出しました。ボルネオでのゴム園、スマトラやブラジルのコーヒー園など、グローバルな視野で事業を展開したのです。

1918年には、大阪野村銀行（後の大和銀行、現在のりそな銀行）を設立。1925年には、同銀行の証券部が独立して野村證券となり、翌年に営業を開始します。野村證券は、日本の証券業界において、現在も重要な役割を担う企業へと成長しました。

徳七は、野村財閥の創始者として、大阪野村銀行、野村證券の社長の他、野村合名会社、野村東印度殖産会社の社長、大阪瓦斯、福島紡績などの取締役も歴任。1928年には貴族院勅選議員に任命され、政治の世界にも進出しました。

経済活動に加え、文化活動にも熱心に取り組んでいました。日仏文化協会の設立にも関わり、フランス政府から勲章を受章しています。自身も茶道や能をたしなみ、茶人としては「得庵」の号を用い、京都南禅寺近くに碧雲荘を築き、数多くの茶会を開催しました。碧雲荘には能舞台も設けられ、茶道具を中心とした古美術品の収集家としても知られており、これらのコレクションは現在、野村美術館に収蔵されています。

1945年、兵庫県武庫郡住吉村の自宅で死去しました。

主な著作には、『護謨と椰子』、『株界三十年史』、『蔦葛』（野村證券社内雑誌『倭』連載の自叙伝）があります。彼の生涯は、梅林貴久生による小説『巨人伝』『証券王』などでも描かれています。

野村徳七は、単なる実業家を超えた存在でした。経済界での成功に加え、文化への貢献、そして博識な人物像は、後世に大きな影響を与え続けています。彼の功績は、現代の日本経済や文化の礎を築いたと言えるでしょう。

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