野村総一郎

野村 総一郎

野村 総一郎（のむら そういちろう）氏は、1949年6月29日に広島県で生まれた日本の医学者であり、特に精神医学の分野で顕著な功績を残している精神科医です。うつ病や双極性障害といった気分障害を専門としており、これらの疾患に関する深い知識と豊富な臨床経験を持っています。

経歴

野村氏のキャリアは、慶應義塾大学医学部を卒業したことから始まります。その後、精神科医としての専門性を深めるため、1983年には名古屋保健衛生大学にて医学博士号を取得しました。さらに、1985年には医学研究の先進地であるアメリカ合衆国へ渡り、テキサス大学医学部やメイヨ医科大学で研鑽を積みました。この海外留学の経験は、その後の研究や臨床活動に大きな影響を与えたと考えられます。

帰国後、野村氏は藤田保健衛生大学精神科で助教授を務め、教育・研究分野でのキャリアをスタートさせました。続いて、立川共済病院神経科の部長として、より実践的な臨床現場での経験を積みました。これらの経験を経て、防衛医科大学校精神科の教授に就任し、長年にわたり精神医学の教育と研究を牽引しました。特に、2012年には防衛医科大学校病院の病院長という重責を担い、組織運営にも貢献しました。

2015年に防衛医科大学校を退官した後も、野村氏は精神医療への貢献を続けました。一般社団法人日本うつ病センターの副理事長を兼任しつつ、六番町メンタルクリニックの所長に就任。第一線での臨床活動や普及啓発に尽力しました。2021年からは同クリニックの名誉院長となり、後進の指導や精神医療の発展に寄与しています。また、2023年からは一般社団法人日本うつ病センターの顧問を務めるなど、現在も日本の精神医学界において重要な役割を果たしています。

社会活動と著作

臨床や教育研究だけでなく、野村氏は社会的な活動にも積極的に取り組んでいます。特に、読売新聞の「人生案内」において、長年にわたり回答者として多くの人々の心の悩みに寄り添ってきました。「人生案内」では、日常生活で直面する様々な精神的な不調や人間関係の悩みに対し、精神科医の専門的な視点から分かりやすく、実践的なアドバイスを提供し、幅広い読者からの信頼を得ています。野村氏が担当した回答は、心の悩みや心の不調に特化した内容としてまとめられ、『人生案内 心の悩み 心の不調に答えます』などの書籍としても刊行され、多くの人々の手元に届けられています。

また、うつ病や双極性障害といった専門分野に関する啓発にも力を入れています。一般向けに病気の理解を深めるための著書を多数執筆しており、その内容は専門的でありながらも平易な言葉で解説されています。

代表的な著作には、

• - 『双極性障害（躁うつ病）のことがよくわかる本』（講談社）
• - 『うつ病のことが正しくわかる本』（西東社）
• - 『新版 うつ病をなおす』（講談社）
• - 『新版 入門 うつ病のことがよくわかる本』（講談社、監修）

などがあり、これらの書籍は、患者本人やその家族、あるいは心の健康に関心を持つ一般の人々が、精神疾患について正しく理解し、向き合うための助けとなっています。

さらに、精神医学の枠を超えたテーマにも触れており、『人生に、上下も勝ち負けもありません 精神科医が教える老子の言葉』（文響社）のような著作を通じて、現代社会における生きづらさに対する哲学的・精神科医的な洞察を提供しています。この著作は文庫版としても出版され、より多くの読者に読まれています。

近年の著書としては、『「ぐるぐる考えすぎ」から抜け出す心のストレッチ法』（三笠書房）があり、これは現代人が抱えがちな思考の偏りや不安への対処法について解説したものです。

野村総一郎氏は、長年の臨床経験と研究に加え、一般社会への積極的な情報発信を通じて、日本の精神医療の発展と国民の心の健康増進に多大な貢献を続けています。

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