野村芳国

野村芳国（のむら よしくに）について

野村芳国は、江戸時代末期から明治時代にかけて活動した浮世絵師であり、大坂出身の芸術家です。生年は不明ですが、明治31年4月5日に他界しました。初名は一陽亭芳信で、後に「笑翁」という号を名乗るようになりました。彼は一陽亭の門弟として修業し、特に役者絵の分野で評判を得ました。

来歴

芳国は俗称「粂蔵」として親しまれ、彼が手掛けた作品は大坂の芝居小屋や見世物小屋で出回っていました。彼の創作活動は特に大阪の千日前に集中し、看板絵を多く描いたことで知られています。彼の作品は、役者たちの華やかさを表現し、観客の関心を引くことに特化していたと言えます。

芳国は激しい気性を持っており、その性格は周囲にも影響を与えました。特に彼の養子である常松（二代目芳国）と野村芳光は、芳国の激しさから離れることとなりました。芳光は入門してから二年後、京都にいる二代目芳国の元に移りました。その後常松は芳国の名を譲られ、「笑翁」と名乗ることになりました。芳国の戒名は白文方印として知られています。

作品

野村芳国の作品は、いくつかの重要な浮世絵版画が現存しています。代表作には以下のようなものがあります：

1. 「初ぞら太夫 馬のり駒吉 かげ清（四代目中村歌右衛門）」
中判の錦絵3枚が続く作品で、ボストン美術館に所蔵されています。この作品は嘉永3年（1850年）の正月に、大坂で上演された芝居『三春翫雀躍』を基にしています。

2. 「やすなり（二代目片岡我童） 奴 じん五平（二代目嵐璃珏）」
中判錦絵2枚が続く作品で、池田文庫に所蔵されています。同じく嘉永3年の正月に、大坂筑後芝居『玉藻前曦袂』より制作されました。

3. 「遊女喫煙図」
この作品は紙本着色で、「一陽亭」の白文方印と「芳国」の朱文方印が押されています。麻布美術館にて旧蔵されていました。

4. 「更衣美人図」
絹本に着色された作品で、千葉市美術館に所蔵されています。「一陽亭芳国画」の落款と「一陽亭」の白文方印が確認できます。

参考文献

野村芳国に関する詳細な研究は以下の文献に掲載されています：

• - 岡本祐美による「野村芳国伝」、麻布美術館研究紀要No.1（1986年）
• - 小林忠編の『肉筆浮世絵大観（10）　千葉市美術館』（1995年）
• - 財団法人阪急学園による『上方役者絵集成』（第3巻）（2001年）

野村芳国は激しい気性を持ちながらも、華やかな作品を数多く生み出し、浮世絵界にその名を残す重要なアーティストでした。

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