野澤吉兵衛

野澤吉兵衛の名跡について

野澤吉兵衛（のざわ きちべえ）は、文楽義太夫節において名を残した三味線方の名跡です。この名跡は、歴史を通じてさまざまな代が受け継ぎ、文楽の発展に貢献してきました。以下では、歴代の野澤吉兵衛について詳しく解説します。

初代吉兵衛

初代野澤吉兵衛は、生年が不詳ですが文化12年として知られています。本名は丹波屋吉兵衛であり、京都の西陣で生まれました。彼は2代目野澤喜八郎の弟子であり、1788年に吉兵衛を名乗るようになりました。初代は京都を中心に活動し、特に2代目竹本内匠太夫との相三味線で有名でした。最後の公演は1813年の御霊芝居における「女鉢木」で、これをもって引退しました。この初代は「松屋町」とも呼ばれていました。

2代目吉兵衛

2代目は、木村忠兵衛という本名で、初代吉兵衛の弟子である初代野澤吉彌から名を受け継ぎました。彼の生年は不詳で、嘉永6年に客死しました。京都出身で初代からの伝統を受け継ぎましたが、詳細については少なく、彼の功績はあまり知られていません。

3代目吉兵衛

3代目の野澤吉兵衛は、文政4年に生まれました。本名は佐田屋市治郎で、大坂に在住しました。初代竹本越路大夫の子として、幼い頃から音楽的な環境に育ちました。14歳で鶴澤文三に弟子入りし、様々な名跡を経て1840年に3代目吉兵衛を襲名します。彼は特に「鬼吉兵衛」というあだ名で知られていました。

4代目吉兵衛

4代目の本名は鈴木東三郎で、天保元年に名古屋に生まれました。3代目の弟子として、さまざまな名手との共演を経験しました。1863年、彼は4代目吉兵衛を襲名し、5代目竹本春太夫との相三味線で活動しました。1872年に引退。

5代目吉兵衛

5代目は鈴木繁造、天保12年に生まれました。讃岐国が彼の出生地で、3代目の弟子として修行を重ねました。1865年に5代目吉彌を襲名し、その後、1883年に5代目野澤吉兵衛を名乗ります。彼は同業者との競争により引退を決意しました。

6代目吉兵衛

6代目吉兵衛は松井福松という本名で、1868年に大阪市で誕生しました。1877年に弟子入りし、1890年に6代目吉彌として活動しました。後に6代目吉兵衛を襲名し、世話物を得意としました。教育に力を入れ、野澤会の結成にも関与しました。

7代目吉兵衛

7代目の本名は竹中卯之助で、1879年に大阪に生まれました。若いころから音楽に親しみ、1890年に入門しました。彼は長い間、3代目竹本伊達太夫の相三味線を務め、1926年に7代目吉兵衛を襲名します。1942年に逝去しました。

8代目吉兵衛

8代目は真次恒三と名乗り、1888年に京都で誕生しました。1896年に弟子となり、1926年に8代目吉兵衛を襲名しました。長いキャリアを通じて、多くの舞台に立ち、文楽の発展に寄与しました。

9代目吉兵衛

9代目の本名は川端陸三で、1903年に大阪で生まれました。1914年に入門し、長いキャリアを重ねました。1963年には9代目吉兵衛を襲名し、文楽の重要な存在として活動を続けました。1979年には文部大臣賞を受賞しました。

結論

以上のように、野澤吉兵衛という名跡は歴代の三味線奏者たちによって受け継がれ、文楽の発展に多大な影響を与えてきました。彼らの活躍は、現在でも多くの人々に愛され続けています。

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