金与正

金与正：北朝鮮の権力中枢に立つ女性政治家

金与正（キム・ヨジョン）は、北朝鮮の政界において重要な役割を担う女性政治家です。金正恩朝鮮労働党総書記の同母妹であり、その血縁関係と政治的なキャリアから、国内外で大きな注目を集めています。

生い立ちと教育

1988年生まれの金与正は、北朝鮮の最高指導者であった金正日総書記の7番目の子として、恵まれた環境で育ちました。幼少期は平壌郊外の豪邸で過ごし、一般社会とは隔絶された生活を送っていたと言われています。金正日総書記は、金正恩と金与正の二人に政治家の資質を見出し、特に金与正の頭の回転の速さを高く評価していたとされています。

1996年から2000年末にかけて、兄の金正恩と共にスイスのベルンで留学生活を送りました。偽名を使い、国際学校で英語、ドイツ語、フランス語を学びました。ベルンでの小学校相当の教育後、家庭教師による教育を受け、2007年頃には金日成総合大学に入学、物理学科を専攻したと推測されています。

政治キャリアの始まりと党内での昇進

2010年代初頭、金正恩が後継者として指名された後、金与正は公式の場に姿を現すようになりました。当初は、父である金正日の葬儀が初めての公の場でした。その後、朝鮮労働党中央委員会の責任幹部として報道され、党内での地位を着実に高めていきました。2014年には朝鮮労働党中央委員会副部長に就任し、宣伝扇動部や組織指導部に所属していたと推測されています。宣伝扇動部は思想統制や体制宣伝、組織指導部は人事査定や粛正といった権限を持つ重要な部署です。

2010年代後半には、党中央委員会委員に選出され、さらに政治局員候補にも選出されました。2018年の平昌オリンピックでは、金正恩の特使として韓国を訪問し、文在寅大統領と会談しました。この訪問は、金日成直系の子孫が初めて韓国を訪問した歴史的な出来事でした。この際、金与正は「党中央委員会第1副部長」の肩書で紹介され、党内での地位の更なる上昇を示しました。

しかし、2019年の米朝首脳会談決裂後、一時的に動静が確認されなくなりました。その後、党中央委員会総会で新たな第1副部長職に就任するなど、その後も党内での重要な地位を維持しています。

金与正の政治的役割

金与正は、金正恩政権における重要な役割を担っています。党内での高い地位、対外的な外交活動、そして時に強硬な姿勢を見せる談話発表など、その影響力は非常に大きいと言えます。特に、韓国やアメリカ合衆国への対応においては、時に強い批判や非難を含む談話発表を行い、注目を集めています。

結婚と私生活

金与正の私生活については、様々な憶測が飛び交っていますが、確かな情報は限られています。2010年代半ばには結婚していたという報道もありましたが、後に未婚であるとの情報も出ています。現在、夫は崔竜海の次男であるとされており、その義父である崔竜海は北朝鮮の有力者です。

後継者候補としての観測

金正恩の健康不安が取り沙汰される度に、金与正は後継者候補の1人として言及されます。党内での高い地位、発言力、そして金正恩政権への強い影響力などがその根拠として挙げられます。しかし、後継者問題については、依然として不確定な要素が多く残されています。

結論

金与正は、北朝鮮の政界における重要な人物であり、その言動は国内外に大きな影響を与えています。今後、彼女がどのような役割を担い、北朝鮮の政治にどのような影響を与えていくのか、注目が必要です。彼女の経歴や政治的役割、そして後継者候補としての可能性については、様々な観測や憶測が存在し、今後も詳細な情報が待たれるところです。

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