金井利之

金井利之は、1967年群馬県桐生市生まれの日本の行政学者であり、都市行政学とオランダ行政研究を専門としています。東京大学法学部を卒業後、同大学の助手、東京都立大学の助教授を経て、現在は東京大学大学院法学政治学研究科の教授を務めています。また、2012年には大阪市特別顧問にも就任しました。

金井氏の研究は、都市行政、地方自治、財政、原子力政策など多岐にわたります。特に、オランダの行政制度に関する研究は、日本の地方自治制度を考える上で重要な視点を提供しています。著書には、自治制度のあり方を論じた『自治制度』(2007年)や、地方自治体と原子力発電所との関係を考察した『原発と自治体』(2012年)などがあります。

『自治制度』では、地方自治の本質を問い、その制度設計について深く掘り下げています。この著作は、2008年度の公共政策学会著作賞を受賞しており、学術的な評価も高いものです。また、『原発と自治体』では、東日本大震災以降、原子力発電所を抱える自治体が直面する課題を分析し、今後の原子力政策のあり方について提言を行っています。この著作は、2013年度の自治体学会賞を受賞しました。

他にも、『財政調整の一般理論』(1999年)では地方財政制度の理論的考察を行い、『実践自治体行政学』(2011年)では地方自治体における具体的な行政課題について議論するなど、幅広いテーマで研究成果を発表しています。

近著では、『コロナ対策禍の国と自治体 災害行政の迷走と閉塞』(2021年)において、新型コロナウイルス感染症のパンデミック下における国と自治体の関係性を分析し、災害行政の課題を指摘しています。共著も多く、『地方自治』(2007年初版・2011年改訂版)では、地方自治の基礎理論を解説しています。

また、地方自治体の事例研究にも力を入れており、著書『赤池町の財政再建と財政課長・安武憲明』(2009年)や『高宮町・地域振興会方式と町長・児玉更太郎』(2011年)では、特定の自治体の取り組みを詳細に分析し、その成功と課題を明らかにしています。さらに、『大飯原子力発電所はこうしてできた―大飯町企画財政課長永井學調書』(2015年)では、原子力発電所建設に関わる地方自治体の実情を記録しています。

金井氏は、学術研究だけでなく、自治体の政策決定にも積極的に関わっています。大阪市特別顧問として、市の政策運営に助言を行いました。これらの活動を通して、理論と実践の両面から地方自治の発展に貢献していると言えるでしょう。彼の研究は、現代日本の地方自治を考える上で、欠かすことのできない重要な知見を提供しています。

もう一度検索