金原亭馬生 (4代目)

四代目金原亭馬生（1823年 - 1889年）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した落語家です。本名は平沼左七といい、三代目金原亭馬生の門下で馬力と名乗り、後に林々舎馬勇と改名しました。三代目馬生の死後、四代目馬生を襲名しましたが、その経緯には複雑な事情がありました。三代目の未亡人は、当初、金原亭馬きんに四代目を継がせるつもりでしたが、馬きんが地方巡業で多忙だったため、馬勇が未亡人の反対を押し切って四代目を襲名したのです。

しかし、四代目馬生は落語家としての才能を十分に開花させることができず、その真価を発揮することはできませんでした。その一方で、彼は「策師」としての才能を発揮し、落語界の裏方として重要な役割を担いました。当時、落語界では「落語睦連」の頭取を務めていた三遊亭圓朝や、初代春錦亭柳桜、五代目桂文治らが活躍していましたが、四代目馬生は表舞台には立たず、税務や事務など、組織運営を支える仕事に徹しました。

四代目馬生の功績として特筆すべきは、浪花節の寄席進出を支援したことです。当時、浪花節は寄席での上演が認められていませんでしたが、美弘舎東一が寄席への進出を企図した際、四代目馬生は一計を案じ、当局への働きかけによって浪花節の高座出演を可能にしました。この功績によって、浪花節は寄席という新たな活躍の場を得ることになりました。しかし、この行動がきっかけとなり、四代目馬生は落語界から疎まれ、高座に上がることができなくなり、経済的に困窮してしまいました。

見かねた美弘舎東一は、初代談洲楼燕枝に四代目馬生の復帰を懇願しましたが、受け入れられることはありませんでした。失意のうちに困窮生活を送る中、四代目馬生は名跡を返上しています。彼の死後、葬儀は浪花節関係者が執り行う予定でしたが、三代目春風亭柳枝が中心となって葬儀を執り行うことになりました。墓所は、はなし塚がある浅草寿町（現在の台東区寿）の長瀧山本法寺にあり、墓石には林々舎馬勇の名が刻まれていましたが、現在は存在していません。

四代目金原亭馬生は、落語家としては不遇でしたが、その才能は裏方として、また浪花節の発展に貢献した人物として、記憶されるべきでしょう。

主な弟子には、五代目金原亭馬生、如龍亭馬若がいます。

参考資料：諸芸懇話会、大阪芸能懇話会共編『古今東西落語家事典』平凡社

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