金史良

金 史良（キム・サリャン）

金史良（キム・サリャン）は、1914年3月3日に朝鮮の平壌で生まれ、1950年以降行方不明となった小説家である。彼は本名を金時昌（キム・シチャン）といい、日本語と朝鮮語による創作を行ったことから、特に「在日朝鮮人文学」の分野において先駆者的存在として評価されている。

若年期

金史良は裕福な家庭に生まれ育ち、母親と姉が熱心なキリスト教徒であった。彼の兄は、朝鮮で初めて朝鮮総督府専売局長を務めた。彼は1932年に留学のため初めて日本に渡り、佐賀高等学校に入学する。ここで日本語での創作活動を始め、最初の作品「荷」を卒業記念誌に発表した。

東京帝国大学時代

1935年、金史良は東京帝国大学文学部に進みドイツ文学を学ぶ。この頃、彼は同人誌『堤防』を発刊したり、朝鮮の芸術運動に関与したために逮捕されるなど、波乱に満ちた大学生活を送った。彼は日本語による作品の中で、朝鮮の現実を日本の読者に伝えようとする意識を持っていた。特に、芥川賞候補作となった「光の中に」や「土城廊」、「箕子林」など、民族主義的なテーマの作品を次々と発表し、短期間で日本における民族主義作家としての地位を築いた。

作家としての活動

金史良の作品は、朝鮮の植民地政策の中で特に困難な状況におかれていたが、その中でも彼は創作活動を続けた。1941年、彼は鎌倉警察署に逮捕され、戦争遂行に向けた態度の変化を余儀なくされた。1942年に帰国後、長編小説「太白山脈」を執筆し、日本統治下の厳しい状況を反映した作品として評価されている。この作品は、当時の民族運動に対する微妙な立場を反映しており、彼の書く民族の苦悩と希望の狭間が描かれている。

抗日運動およびその後

1945年、金史良は抗日解放区への脱出を試み、様々な作品を執筆しながら文化啓蒙活動に貢献した。日本の敗戦後、彼は新しい朝鮮社会の文脈の中で再び創作活動に励むが、1950年に朝鮮戦争が勃発すると、彼は北朝鮮の人民軍に従軍することになる。彼の死に関する情報は不明瞭で、1950年10月の時点で行方不明となった可能性が高い。彼の著作や活動は、その後も多くの人々に影響を与え続けている。

結論

金史良は朝鮮近代文学における重要な存在であり、彼の作品は民族の苦悩を深く描いている。彼の影響は、在日朝鮮人文学のみならず、広く文学界に広がっており、彼の記憶は今もなお多くの人々の心に生き続けている。

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