金堤空港

金堤空港（キムジェくうこう）計画の全貌

金堤空港は、大韓民国全羅北道金堤市に計画された空港です。当初は全羅北道地域における民間航空需要に応えるため、1990年代末に計画が始まりました。しかし、様々な要因が重なり、最終的に建設されることはありませんでした。本記事では、金堤空港の計画から中止に至るまでの詳細な経緯を、その背景にある複雑な事情とともに解説します。

空港計画の概要

金堤空港は、全羅北道の民間空港として構想されました。当初は「全州圏新空港」や「全州新空港」とも呼ばれていました。計画では、長さ1,800m、幅45mの滑走路、23,435㎡の駐機場、8,652㎡の旅客ターミナル、18,300㎡の駐車場が建設される予定でした。

計画の背景

全羅北道地域における航空交通の歴史は古く、1930年代には京城（現在のソウル）と裡里（現在の益山）を結ぶ定期路線が存在しました。1970年代には大韓航空が全州飛行場や群山飛行場に就航していましたが、高速道路の開通やオイルショックの影響で運休となりました。1980年代末から韓国各地で空港整備が進められる中、全羅北道では群山飛行場の活用が検討されましたが、軍との共用による制約や、全羅北道の北西端に位置することから、より良い立地の空港が必要と指摘されました。

1990年12月、韓国交通部は全北空港建設の妥当性調査を開始し、1991年11月に空港新設の妥当性を認めました。しかし、並行して群山飛行場の民間航空施設整備も進められ、1992年12月には群山空港として開港し、大韓航空が再就航しました。1994年の「空港開発中長期基本計画」では、全州新空港の構想は反映されず、群山空港の拡張のみが盛り込まれました。

計画の開始と地元からの反対

1998年、全羅道出身の金大中が大統領に就任すると、全羅北道は全州新空港の建設を建設交通部に要請しました。これを受けて建設交通部は、金堤市白山面における空港新設を中長期計画に反映しました。しかし、この計画に対し、金堤市では騒音などの環境悪化や採算性への疑問から反対意見が出され、市議会が反対決議を行いました。住民や市民団体も反対運動を展開し、国会前でデモを行うなど激しい反対活動を行いました。また、予定地周辺に電波塔が複数存在することも、航空機の運用に影響を与える可能性が指摘されました。

1999年3月、監査院は金堤空港の計画が競合する交通機関との関連が考慮されていないとして、計画の全面再検討を建設交通部に勧告しました。しかし、金大統領が新空港の推進を主張したため、建設交通部は再度妥当性調査を実施し、建設を妥当とする結論を出しました。その後、基本設計、実施設計が進められましたが、2001年には空軍から運用上の問題が指摘されるなど、計画は難航しました。

計画の延期と中止

2002年、建設工事の入札が行われましたが、工事会社が現場事務所を設置したのみで着工は延期されました。2004年には監査院が経済的妥当性を再検討するよう勧告したため、計画が中止される可能性が出てきました。2005年には全羅北道が用地買収の完了を宣言しましたが、着工の目処が立たないため、2006年から買収済み用地の賃貸が始まりました。2008年、李明博大統領が就任すると、金堤空港の推進は主要政策から外され、群山空港の拡張に重点が置かれるようになりました。2011年には、金堤空港の開発計画が正式に削除され、買収済みの用地を軽飛行場として活用することが検討されることになりました。

計画中止後の動き

2011年、全羅北道と金堤市は、買収済みの用地内に軽飛行場を建設する計画を策定しました。しかし、金堤空港の計画は、長年の議論と反対運動を経て、最終的に中止となりました。この計画は、地域間の利害対立、政治的な駆け引き、そして経済的な合理性といった、様々な要因が複雑に絡み合って、中止に至ったと言えるでしょう。

年表

1996年12月：全羅北道、全州新空港の妥当性調査を実施。
1998年9月19日：建設交通部「空港開発中長期基本計画変更」告示。全州新空港開発が追加。
1999年3月：監査院、計画の再検討を勧告。
1999年12月：基本設計開始。
2000年12月：実施設計開始。
2001年7月3日：建設交通部「金堤空港基本計画」告示。
2002年2月9日：ソウル地方航空庁「金堤空港設置」告示。
2002年12月20日：建設工事入札。
2003年6月：現場事務所設置。
2003年11月1日：ソウル地方航空庁「金堤空港空港開発事業実施計画」告示。
2004年6月：監査院、計画の再検討を勧告。
2006年11月24日：建設交通部「第3次空港開発中長期総合計画」告示。
* 2011年1月5日：国土海洋部「第4次空港開発中長期総合計画」告示。

まとめ

金堤空港の計画は、全羅北道地域の航空需要に応えるために構想されたものの、様々な要因によって実現に至りませんでした。この計画の失敗は、空港建設における複雑な問題点を浮き彫りにするとともに、地域開発における意思決定の難しさを示唆するものと言えるでしょう。現在、買収済みの土地は軽飛行場としての活用が検討されていますが、金堤空港の計画は、韓国の空港開発史における重要な教訓として記憶されることでしょう。

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