金子九郎

金子 九郎

金子 九郎（かねこ くろう、1902年-1982年）は、日本の近代における造園学の発展に寄与した研究者であり、実務家、教育者、そして児童指導理論家として多方面で活躍した人物です。その生涯は、都市計画や公園緑地行政の実務から始まり、教育、学会活動、さらには国際貢献に至るまで、幅広い分野に及びました。

生涯とキャリアの歩み

1902年に生を受けた金子九郎は、勉学に励み、1928年に東京帝国大学農学部農学科を卒業しました。卒業後は、同大学大学院に1933年まで在籍し、さらに学問を深めました。大学院修了後、彼は公的なキャリアに進み、1933年から1944年にかけて、東京市公園課、内務省都市計画東京地方委員会、横浜市都市計画課などで勤務しました。これらの職務を通じて、日本の都市計画や公園行政の現場において、実務経験を積みました。

第二次世界大戦後、金子九郎は教育の分野に活動の場を移します。1945年から1951年まで、新潟県立農林専門学校で教授を務め、後進の指導にあたりました。これに加え、日本女子大学家政学部生活芸術学科、日本大学農獣医学部農学科、明治大学の農学部農学科および工学部建築学科といった様々な教育機関で非常勤講師を歴任し、多岐にわたる分野の学生たちに造園学や関連分野の知識を伝えました。

主な役職と貢献

教育活動と並行して、金子九郎は関連団体の運営にも深く関わりました。特に、日本児童遊園協会の常務理事として、児童の遊び場環境の改善と普及に尽力したことは、彼の「児童指導理論家」としての側面を象徴する活動です。また、日本造園学会の理事および常務理事を1959年から1964年まで務め、学会の発展と造園学の研究推進に貢献しました。

国際的な活動も行っており、1956年から1957年にはアフガニスタンのカーブル市で技術顧問として、現地の造園分野に専門知識を提供しました。さらに、国際造園連盟（IFLA）の活動にも積極的に関わり、1964年に日本で開催されたIFLA日本大会では事務局長を務め、国際交流の促進に尽力しました。

研究テーマと主な著作

金子九郎の研究テーマは多岐にわたりましたが、特に児童の遊び場や児童指導に関する関心が高く、この分野における理論的考察や実態調査に基づいた著作を多く残しています。『児童公園の役割』や『公園に於ける兒童指導に就て』といった論文は、当時の児童を取り巻く環境や指導のあり方に対する彼の洞察を示すものです。また、『造園の本質に関する一つの図式について』や『庭園に於ける「現代」のもつ意味』など、造園学そのものの哲学的・理論的な探求にも取り組みました。都市計画における公園の位置づけや構造に関する論考（例: 『近隣制に於ける公園の位置とその構造』）も発表しており、実務家としての視点も研究に反映されています。

受賞と栄誉

長年にわたる造園学への貢献、行政実務、教育、および関連団体での活動功績は高く評価され、金子九郎は数々の栄誉に浴しました。1965年には建設大臣表彰を受け、1972年には勲四等瑞宝章を受章しています。さらに、1975年には第4回日本公園緑地協会北村賞を受賞するなど、その生涯を通じて日本の公園緑地分野に大きな足跡を残しました。

金子九郎は、造園学という学問の枠を超え、都市環境、児童の健全な育成、国際交流など、幅広い分野で重要な役割を果たした人物として、その功績は今もなお評価されています。

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