金子隆芳

金子 隆芳（かねこ たかよし）

金子隆芳氏は、1928年5月17日に生まれ、2022年7月2日に94歳で亡くなった日本の心理学者であり、特に知覚心理学と色彩学の専門家として知られています。彼は筑波大学の名誉教授であり、日本心理学会の元理事長でもあります。金子氏は社会的な活動にも積極的に関与し、日本色覚差別撤廃の会の会長を務めました。彼の業績は心理学と教育界においても高く評価され、正四位瑞宝中綬章という位階勲等を受けるなど、その貢献は幅広い範囲に渡ります。

経歴

金子氏は1952年に東京文理科大学を卒業し、続いて1954年にはミズーリ大学の大学院で修士課程を修了し、1957年には東京教育大学の大学院で博士課程を退学しました。1963年に「主として物体色における心理学的等歩度色彩空間に関する研究」により文学博士の学位を取得しました。以降、1974年には東京教育大学教育学部で教授に就任し、1975年には筑波大学の心理学系の教授となりました。1992年に筑波大学を定年退職後も、日本大学大学院芸術学研究科で非常勤講師として教鞭を執るなど、教育活動を継続しました。

色覚検査の開発

金子氏は、眼科医の高柳泰世と共に「色のなかまテスト」（Color Mate Test、CMT）を開発し、これは従来の「石原式色覚異常検査表」に代わる新しい学校教育用の色覚検査表として広く認知されています。彼自身も色覚異常を抱えており、それを公表することで、色覚差別撤廃のための積極的な活動を行いました。

受賞歴

金子氏は、心理学と色彩学に関する多くの研究成果により、2004年には日本色彩学会賞を受賞しました。また、2019年には秋の叙勲で瑞宝中綬章を授与され、2022年に亡くなった際には正四位に叙されたことも、彼の功績を示す証となっています。

著書と翻訳作品

金子氏は多くの著書や翻訳を手掛けており、1965年に出版された『知覚と条件反射: 知覚の反射的基礎』では、知覚と条件反射の関係について深く掘り下げています。また、1968年の『色の科学: その精神物理学』や、1990年の『色彩の心理学』などを通じて、色彩に関する科学的理解を深めるための基礎を築きました。これらの著作は、心理学だけでなく、教育やアートなど様々な分野においても影響を与え続けています。

論文研究

金子氏は、心理学分野で多数の論文も発表しています。この中には、感覚の強さや色の純度に関する研究、脳波に関する研究が含まれています。彼の研究は、心理学的な知見を基に、教育や様々な心理的現象の理解を促進するための重要な要素となっています。

総括

金子隆芳氏は、心理学と色彩学において顕著な業績を残し、社会的な活動を通じて色覚差別撤廃に力を注ぎました。彼の教育的な影響力や研究成果は、今後も多くの人々に受け継がれ、色彩の理解を深めるための指針となることでしょう。

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