金子静枝

金子静枝：明治の新聞記者、小説家、そして美術鑑定家

金子静枝（1851年5月31日 - 1909年2月18日）は、明治時代に新聞記者、小説家、そして美術鑑定家として活躍した人物です。主に日出新聞（現在の京都新聞）で記者として活動し、小説も執筆しました。本名は錦二といい、明治20年代から金子静枝の名を名乗りました。

生涯

誕生と初期の活動

1851年、越後国蒲原郡五泉（現在の新潟県五泉市）に、代々医業を営む家に生まれました。1875年に新潟県立医学校に入学しますが、文学への傾倒が深く、医学の道から新聞の世界へと進みます。

新聞記者としてのキャリア

1878年に新潟新聞社に入社し、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせます。その後、1879年には東京の團團珍聞社へ移籍。そして1885年4月、京都で「日出新聞」が創刊されるにあたり、記者として迎えられ、社会文芸を担当し、自らも小説を執筆しました。

美術界への貢献

金子は新聞記者として活動する傍ら、美術界にも深く関わりました。1888年には、近畿地方の古美術調査に日出新聞の記者として随行し、その模様を同紙に連載しました。1890年1月には京都美術協会の委員に嘱託され、1892年からは懸賞募集図案の審査員を毎回務めるなど、美術界での存在感を高めていきました。1893年には、神坂雪佳、岸光景らと芦手絵会を結成し、1894年には京都美術協会雑誌編纂委員を委嘱されています。

博覧会と祭典への参加

1895年には、第4回内国勧業博覧会第2部審査品評人に任命され、平安遷都記念祭の委員も務めました。この年に創始された時代祭の行列の一部を構成するなど、京都の文化振興にも貢献しました。また、第1回日本青年絵画共進会の開催に尽力し、第1回全国菓子品評会の審査委員も務めました。

その後

1896年以降も、京都美術協会で開催された新古美術品展覧会の委員や審査員を歴任し、審査部長、監査委員、監査幹事などを委嘱されました。京都府立美術工芸学校商議員も嘱託され、1897年には京都漆工会漆器蒔絵図案会審査員、京都後素協会主催第1回全国絵画共進会にて審査幹事を務めました。豊国会委員も嘱託され、祭典部を担当しました。1899年には全国意匠工芸品博覧会高等審査員、第2回全国絵画共進会の審査幹事を務め、1900年には京都彫技会審査員を委嘱されています。

1901年には、大日本商工連合品評会審査委員、全国製産品博覧会高等審査委員を委嘱され、関西美術会が発足すると幹事となりました。1902年には、北野天満宮千年祭に式典部委員として活躍し、洋画家20日会にも参加しました。1903年には、第5回内国勧業博覧会の審査官を担当し、1907年には遊戯品展覧会審査員を嘱託されました。

死去

1909年2月18日、胃癌により永眠。4日後、建仁寺方丈にて葬儀が執り行われました。

金子静枝研究のきっかけ

同志社大学文学部教授の竹居明男氏によれば、1980年8月25日、京都北野天満宮の縁日で古書店から5冊のスクラップ・ブックを購入したことが、金子静枝研究のきっかけになったといいます。スクラップ・ブックには「金子文庫」の蔵書印が押されており、「日出新聞」の明治21年近畿地方古美術調査の報道記事が収録されていました。現在は8冊となり、金子静枝研究の重要な資料となっています。

投書家から小説家へ

木下知威氏によれば、金子は投書家としてキャリアをスタートさせています。1877年には遊女と娼婦に関する記事を『團團珍聞』に投稿したのが確認される初出であり、その後、新潟新聞に入社し、金子の名前で小説が確認されるのは1880年に連載された「佐渡航海乙女替玉」であるとされています。

参考文献

竹居明男『『日出新聞』記者金子静枝と明治の京都』 芸艸堂 2013年 ISBN 978-4-7538-0273-9
（同書に木下知威「金子静枝に向かって」が収録されている）

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