金拍車の戦い

金拍車の戦い

金拍車の戦い（きんはくしゃのたたかい）は、1302年7月11日に現在のベルギー、コルトレイクで行われた戦闘で、フランドルの市民軍がフランス軍を打ち破ったことで知られています。この戦いはフランス・フランドル戦争の一環であり、フランス王フィリップ4世によるフランドル併合を目指す動きに対抗する形で起こりました。この戦闘において、騎士の象徴である「金拍車」が戦場に多数残されたため、この名が付けられました。

背景

歴史的な観点から見ると、フランドル地域は843年のフランク王国の分割に始まる複雑な歴史を有しています。この地域は当初、中フランク王国に含まれていましたが、870年に西フランク王国に併合されました。しかし、フランドルは独立性が強く、この地域を治めるフランドル伯は国王に匹敵する力を持っていました。特に、第4回十字軍の際、フランドル伯ボードゥアンはラテン帝国の皇帝になりました。しかし、13世紀にはフランス王権の強化に伴い、その力は相対的に低下していきました。

経済の面では、12世紀以降、イングランドからフランドルへの羊毛の輸出が盛んになり、フランドル地域は毛織物産業で急成長しました。このため、フランドルとイングランドの結びつきは非常に強く、フランス王によるその支配は双方にとって重大な問題とされました。他方、フランスは地域の統一を図っており、フランドルもその対象とされました。

当時のフランドル伯ギーはフランス王と対抗するため、イングランド王太子との結婚を画策しましたが、フィリップ4世はこれを妨害しようとしたため、ギーは姿勢を貫きました。

ブリュージュの朝

1297年、フィリップ4世はフランドルの併合を宣言し、フランス軍がその占領に乗り出しましたが、フランドルの市民の反乱に遭遇しました。1302年5月に勃発した「ブリュージュの朝」では、市民たちがフランス人を迫害し、その結果、フランドルの諸都市は結束して抵抗の意思を固めました。この情勢を受けて、フランス軍との戦闘が避けられない状況となりました。

コルトレイクの戦闘

1302年7月、フランドル軍はフランス軍との交戦に備えました。フランドル軍は市民兵を中心に約9000人の歩兵と400人の騎士から構成されていました。それに対し、フランス軍は2500人の騎士、1000人の弩弓兵、1000人のパイク兵と約3500人のその他の歩兵の計8000人でした。当時、騎士は数の上で圧倒的な優位があると信じられていました。

しかしながら、フランドル軍の陣形は堅固であり、周囲の地形も騎兵にとって不利でした。アルトワ伯はフランス軍の先陣を指揮し、騎士による攻撃を決断しましたが、フランドル軍は非常に組織的でした。騎士軍による突撃は効果を発揮せず、逆に騎士たちは多くが捕らえられずに命を落としました。戦闘はフランドル軍の圧勝に終わり、戦闘の名残として多くの金拍車が戦場に残されました。

結果と影響

この戦いでフランス軍は大量の戦死者を出し、アルトワ伯や多くの貴族が命を失ったと伝えられています。フランドル軍はその勝利を祝し、金拍車を聖母教会に掲げました。その後、フランスとの戦争は続き、長い間、英仏間での対立が見られました。現代のベルギーでは、7月11日は重要な祝日とされ、フランドル地域のアイデンティティの象徴ともなっています。

軍事的には、この戦いは市民軍による騎士軍の敗北という歴史的な側面を持ち、中世の戦のあり方を変える一因となったのです。

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