拍車

拍車：馬術における推進と制御の道具

拍車は、馬術において騎手が馬に推進の合図を与えるための副扶助道具です。誤解されがちですが、馬を罰するためのものではなく、脚による扶助を効果的に強化する役割を果たします。

拍車の構造と種類

拍車は、乗馬用の靴のかかと部分に装着します。靴の踵部分には、拍車を固定するための「拍車置き」と呼ばれる突起が備わっています。形状は大きく分けて、棒状の突起を持つ「棒拍」と円盤状の「輪拍」の2種類があります。

棒拍は、さらに先端が平面や球面のものなどがあり、輪拍には円盤にギザギザがあるものとないものがあります。突起の長さも1cmから4cm程度まで様々です。一般的に、突起が下向きに湾曲していたり、先端が丸まっているものは、馬への当たりが優しく、穏やかな扶助となります。近年では、突起のない擬似拍車や先端部が交換可能な拍車も登場しています。

馬への影響と適切な使用方法

拍車は、馬によっては興奮状態を引き起こす可能性があります。そのため、馬の状態をよく観察し、必要に応じて使用を控える判断が重要です。また、拍車による扶助は強力な刺激となるため、常に使用していると馬が慣れてしまい、脚扶助への反応が鈍くなる可能性があります。効果的なコミュニケーションを図るためには、拍車への過剰な依存を避け、適切なタイミングで使用することが大切です。

歴史と文化における拍車

江戸時代以前の日本では、鋳鉄製の鐙のかかと部分の突起を拍車として使用していました。また、アメリカ大陸の先住民は、尖らせた鹿の角を足に縛り付けて使用していました。

「拍車をかける」という慣用句は、馬術の文脈を超えて、物事の進行を加速させるという意味で広く使われています。中世ヨーロッパでは、剣と同様に騎士の象徴とされ、騎士叙任式の際に授けられる重要なアイテムでした。

馬術競技会と競馬における拍車

馬術競技会

馬術競技会、特に馬場[[馬術]]競技では、初級者向けの競技を除き、拍車の着用が必須とされています。使用する拍車は金属製でなければならず、形状にも規定があります。柄（shank）は下向きに湾曲していてもまっすぐでも構いませんが、装着状態では拍車の中央からまっすぐ後ろを指す必要があります。また、拍車の腕（arms）や輪拍の輪の部分は滑らかでなければなりません。近年では、金属製の拍車にプラスチック製の先端をつけた「インパルス」拍車や、柄のない「擬似」拍車の使用も認められています。

競馬

[競馬]]においても拍車は使用されていましたが、現代の競馬では騎乗姿勢の変化やゼッケンとの干渉などから、その使用は制限されています。日本では、2010年以降、日本中央[[競馬会]および地方[[競馬]]において、原則として拍車の使用が禁止されました。海外でも、馬体を傷つける可能性があるとの認識から、平地競走での使用は禁止されている国が多数を占め、許可している国でも見習[[騎手]]は使用が禁じられています。国際的な議論においても、障害競走に限定すべきとの意見が強まっています。

まとめ

拍車は、馬術における重要な副扶助道具であり、その歴史と文化的な背景、そして現代における使用状況は多様な側面を持っています。適切な使用方法と、動物福祉への配慮を考慮しながら、馬とのコミュニケーションに役立てることが重要です。

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