金智泰

金智泰（キム・ジテ）：激動の時代を生きた実業家、政治家、言論人

金智泰（キム・ジテ、1908年6月14日 - 1982年4月9日）は、大韓民国（韓国）の資本家、政治家、言論人として、その名を歴史に刻みました。釜山で生まれ、激動の時代を駆け抜けた彼の生涯は、韓国現代史を理解する上で重要な側面を映し出しています。

初期の経歴と事業の成功

1927年、釜山公立商業学校（後の開成高等学校）を卒業後、東洋拓殖株式会社釜山支店に入社しました。しかし、1932年に肺結核のため退社。その後、朝鮮繊維韓国製糸株式会社社長、釜山商工会議所初代会長、釜山日報社長、慶南陸上競技連盟会長など、多岐にわたる役職を歴任しました。

金智泰が資本家としての第一歩を踏み出したのは、東洋拓殖からの払い下げで得た蔚山の土地でした。当初は織物工場を経営するも失敗。その後、紙器製造業に進出し、日中戦争の勃発を背景に事業は成功。紙器製造、紙類貿易、不動産業などを通じて莫大な富を築き上げました。解放後には、朝鮮絹織（前・旭絹織）、三和（サムファ）ゴム、製糸業などを中心に、全国的な資本家としてその名を轟かせました。

1949年には釜山日報を買収し、1959年には釜山文化放送、1961年には韓国文化放送（後の文化放送）を開局。また、1958年には釜日奨学会を設立し、教育文化事業にも貢献しました。

政界での活動と挫折

金智泰は政治家としても活動し、1950年には無所属で韓国国会第2代議員に、1954年には自由党所属で第3代民議院議員に選出されました。しかし、1956年12月には第2次憲法改正（四捨五入改憲）に反対したため、自由党を除名され、その後復党するも、1958年の第4代民議院選挙で落選し、政界から引退しました。

不正蓄財疑惑と財産没収

1961年の5・16軍事クーデター後、金智泰は不正蓄財疑惑で拘束され、多額の還収金を支払うこととなりました。さらに、1962年には国内財産逃避防止法、関税法、刑法、農地改革法違反の疑いで起訴されますが、釜山日報、文化放送、釜山文化放送、釜日奨学会が所有する土地を5・16奨学会に無償寄贈することで公訴が取り下げられ、釈放されました。

この5・16奨学会は後に朴正煕一族の所有物となり、正修奨学会へと移行。金智泰は1976年に自伝でこの移譲が強要されたものだと主張し、財産の返還を求めました。彼の死後、遺族も朴正煕の娘である朴槿恵とこの件で激しく対立することになります。この財産寄贈が自発的なものだったのか、それとも強制的なものだったのかについては、いまだ見解が分かれています。

親日派疑惑と名誉毀損訴訟

金智泰の財産形成過程は、日本統治時代の東洋拓殖での勤務が大きく関わっており、親日派としての疑惑も指摘されてきました。しかし、公的資料や民間の記録には、金が親日派であったという明確な記述は見当たらず、遺族は、金智泰を親日派と呼ぶ行為は名誉毀損であるとして訴訟を起こし、勝訴しました。しかし、この問題は、現在も議論を呼んでいます。

金智泰の生涯は、事業家としての成功、政治家としての挫折、そして財産をめぐる激しい争いに彩られた、まさに激動の時代を象徴するものでした。彼の遺産は、今もなお、韓国社会に大きな影響を与え続けています。

参考文献

김지태(金智泰) - 大韓民國憲政會
[부산 경제 야사] <23> 인물편 김지태 ① 광복이전 기업활동 - 부산일보

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