四捨五入改憲

四捨五入改憲：韓国民主主義の暗部を照らす出来事

1954年、韓国において、第2次憲法改正、いわゆる「四捨五入改憲」が行われました。この出来事は、大統領李承晩の再任を目的とした政治的駆け引きと、その強引な手法によって、韓国の政治史に深く刻まれた出来事として知られています。

当時の韓国憲法では、大統領の任期は4年で、再任は1回のみと規定されていました。1952年の大統領選挙で再選を果たした李承晩大統領は、しかし、終身大統領を目指していました。そのため、憲法改正による再任制限の撤廃を画策したのです。

李承晩大統領とその与党・自由党は、改憲に必要な議席数を確保するため、総選挙で不正行為を働くなど、強引な手段に出ました。選挙後、自由党は改憲に必要な議席数を確保しましたが、ギリギリの状況でした。

そして、9月6日、自由党から憲法改正案が提出されます。この改正案の主な内容は、現職大統領の三選禁止条項の撤廃、大統領の職務不能時の副大統領による継承、国家安全に関する決定の国民投票実施、そして国務総理と内閣に対する国会の不信任権の廃止でした。

この改正案は、大統領中心の政治体制を強化し、李承晩大統領の高齢化に伴う職務遂行の不安を解消することを目的としていました。李承晩大統領の終身政権を目指した改憲であると見なされたため、野党や無所属議員から激しい反発を受けました。

11月27日、国会で改憲案の投票が行われました。結果は、賛成135票、反対60票、棄権6票、無効1票、欠席1票。改憲に必要な136票には1票足りず、当初は否決と宣言されました。

しかし、自由党はこの結果を認めず、翌日に緊急の議員総会を開催しました。そこで、彼らは驚くべき主張をしました。「改憲に必要な票数は203票の3分の2である135.333…票であり、小数点以下を切り捨てることはできない。四捨五入すれば136票となり、改憲案は可決されたとみなすべきだ」というのです。

政府もこの主張に追随し、改憲案は可決されたと発表しました。そして、29日、国会副議長は否決宣言を撤回し、改憲案の可決を宣言。野党議員は抗議して退席し、与党のみで改憲案を再可決しました。

この「四捨五入改憲」は、韓国国民に強い衝撃を与えました。与党の強権的な政治姿勢に対する反発は大きく、この出来事は、2年後に発生する4・19革命の遠因の一つともなったと指摘されています。

この出来事を契機に、憲法改正に関する規定も変更され、改正時の大統領には改正内容が適用されないこととなりました。四捨五入改憲は、韓国民主主義の脆弱性と、権力者の強引な政治手法を象徴する出来事として、現在も記憶されています。その後の韓国の政治改革、民主化運動に大きな影響を与えた重要な出来事であったと言えるでしょう。

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