金沢園

金沢園の歴史と建築

金沢園（かなざわえん）は、神奈川県横浜市金沢区に位置する料亭で、独特の歴史を有しています。元々は1916年に創業された「満月」が前身となり、1930年に「金沢園」として再出発しました。初めは磯子区（現在の金沢区）の柴町に開業し、料亭と旅館の機能を兼ね備えた施設として運営されました。

当時、金沢八景として知られるこの場所は、京浜地区の市民や文化人に愛されていた避暑地でした。例えば、1930年9月7日に発表された与謝野晶子の随筆では、夫妻が金沢園を訪れ、眺望に感動した様子が描かれています。また、1939年には俳人の高浜虚子が「第四回日本探勝会」をここで開催するといった文化交流の場ともなっていました。

金沢園は、創業から100年が近づく中で、建物の保存と新たな活用方法が検討されることとなります。そこで、留学生の支援やシェアハウス事業を展開する実業家が名乗りを上げ、外国人旅行者向けのゲストハウスとカフェレストランへの改修プロジェクトが始まりました。このプロジェクトはクラウドファンディングを通じて資金も調達されました。

実際に、2016年2月には金沢園は一時営業を終了し、改修工事が行われました。その後、同年7月には新たに「Cafe&Dining ぼたん」がオープンし、12月には「旅館 喜多屋」として旅館業の許可も取得しました。しかし、2020年5月に営業が再度終了し、その後9月には以前のオーナーによって「カフェ金澤園」として営業が再開されました。現在でも、地元の松本純衆議院議員が会合の場で利用するなど、地域に根付いた存在となっております。

建築的特徴

金沢園の建築については、東京・品川にあった日本家屋を移築し、1930年に営業を始めました。木造2階建てで、瓦葺の入母屋造りの建物は地域の景観にも調和しています。北側に置かれた玄関からは、1階と2階にそれぞれ4部屋の客室が展開されています。2004年には国の登録有形文化財にも選定され、その歴史的価値が認められることとなりました。

館内に入ると、靴を脱ぐ日本旅館スタイルが徹底されています。浴室は共有であり、竣工当初のフランス製ステンドグラスやモザイクタイルが装飾されていることが特徴です。厨房はオープンキッチンに改装され、最大200人分の懐石料理を調理することも可能になりました。横浜発祥の牛鍋や、地元の漁港から仕入れた新鮮な海の幸、そして横浜市内で採れた野菜を用いた料理が提供され、訪れる人々の舌を楽しませています。

金沢園は、地域の歴史と文化を体現した場所であり、観光客にだけでなく地元住民にとっても愛され続けています。

もう一度検索