モザイクタイル

モザイクタイル：歴史、種類、用途

モザイクタイルは、小さな陶磁器やガラスなどのピースを組み合わせて作られる装飾用タイルです。紀元前90年頃に作られたポンペイ遺跡の出土品「アレクサンドロス大王のイッソスの戦い」は、モザイクタイルの代表的な古代例として知られています。ローマ帝国全盛期には広く普及し、その後も建築装飾に用いられてきました。

歴史

日本におけるモザイクタイルの歴史

日本のモザイクタイルの歴史は比較的浅く、本格的な生産が始まったのは20世紀初頭です。1910年、愛知県常滑町の伊奈初之丞が「陶製モザイク」を、1914年には佐治春蔵がマジョリカモザイク張瓦をそれぞれ展示会に出品しました。

第一次世界大戦後、生活水準の向上や衛生意識の高まりから、モザイクタイルの需要が急増しました。特に、公衆浴場の床材として木板から陶器敷瓦への転換が進んだことが、モザイクタイルの普及を大きく後押ししました。

愛知県常滑町を拠点とする伊奈製陶（後のINAX、現在のLIXIL）は、タイルの大量生産を開始し、1924年には4種類のモザイクタイルをカタログに掲載するまでに至りました。常滑町以外にも、瀬戸市や岐阜県多治見市、笠原町などでモザイクタイルの生産が盛んになり、多治見市笠原町は日本最大のモザイクタイル産地として知られています。

戦後には、顔料を用いたカラコンモザイクタイルが登場し、高度経済成長期にはビルの建設ラッシュを背景に、モザイクタイルの需要はさらに拡大しました。1952年に開発された圧着工法は、モザイクタイルの施工を容易にし、普及に貢献しました。1970年には、陶磁器質タイル張り工法近代化委員会（TKK委員会）が発足し、超高層ビルへのタイル施工技術の普及に努めました。

2016年には、多治見市笠原町にモザイクタイルを専門とする多治見市モザイクタイルミュージアムが開館し、モザイクタイルの歴史や文化を伝える拠点となっています。

モザイクタイルの製造工程

モザイクタイルの製造工程は、原料の調達、成形、焼成、仕上げなど、複数の工程から構成されます。原料となる粘土やガラスなどの素材は、それぞれの特性に合わせて適切な処理が施されます。成形工程では、プレス成形や押し出し成形などの方法を用いて、所定の形状と寸法に成形されます。焼成工程では、高温で焼成することにより、タイルに強度と耐久性を与えます。仕上げ工程では、研磨や着色などの処理を行い、最終的な品質と外観を調整します。

種類

モザイクタイルは、形状、用途、素材などによって分類されます。

形状による分類

正方形：最も一般的な形状で、汎用性が高いです。
円形（丸モザイク）：浴室の床面などに多く使用されます。
六角形
コラベル（ランタン型）
その他異形状

用途による分類

台所・洗面所・トイレ・浴室の壁面
トイレ・浴室の床面
その他の床面
キッチンなどの天板

素材による分類

タイルモザイク：陶磁器製のモザイクタイル
ガラスモザイク：ガラス製のモザイクタイル
大理石モザイク（マーブルモザイク）：天然大理石製のモザイクタイル

特長

モザイクタイルは、小さなタイルをシート状にユニット化して販売されることが多いため、施工が容易です。また、目地によって滑り止め効果も高いため、浴室やトイレの床材として適しています。デザインのバリエーションも豊富で、建築物の壁面や床面を保護するだけでなく、モザイクタイルアートのような美術作品にも利用されています。近年では、外装用モザイクタイルも主流になりつつあります。

まとめ

モザイクタイルは、長い歴史を持つ装飾用タイルであり、その多様な形状、用途、素材から、建築デザインの可能性を広げてきました。今後も、新たな技術やデザインの開発によって、モザイクタイルはさらに進化していくでしょう。

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