金禄公債

金禄公債とは

金禄公債（きんろくこうさい）は、明治維新後の秩禄処分の一環として、華族や士族の禄（給与）を廃止する代わりに、政府が交付した公債です。これは、禄制を自主的に返上した者に交付された秩禄公債とは異なり、強制的な禄の廃止に対する代償として発行されました。

概要

金禄公債は、総額1億7390万8900円という巨額に上り、その利子は年1割、7分、6分、5分の4種類がありました。利子の受け取り期間は5年から14年と定められ、公債を受け取るべき対象者は34万人に達しました。公債が発行されたのは1878年（明治11年）です。

1875年（明治8年）、政府は米で支給していた禄を、貨幣で支給する金禄制度を開始しました。その後、財政難を理由に、従来の禄制を強制的に廃止し、金禄公債を発行しました。公債は30年以内の償還が定められ、額面10円以上のものには7分、100円以上には6分、1000円以上には5分の利子が付きました。売買が可能な金禄（特に薩摩藩士族を優遇）に対しては、1割の利子が与えられました。毎年抽選で選ばれた対象者から公債証書を回収し、額面金額を支払うことで償還が行われました。対象者は、公債に記載された期間内、毎年利子を受け取ることができました。

廃藩置県以前から、各藩や政府の改革によって華士族の禄は大幅に削減されており、上士では十分の一以下となることも珍しくありませんでした。しかし、旧藩主の華族には、藩の収入の十分の一程度と比較的高めの家禄が設定されていました。

公債の額面は、この金禄を基準に算出されました。公債は売買可能であり、事業資金として活用されることが期待されました。しかし、平均利子が当時の東京の最低賃金の約3分の1程度と少額であったため、多くの士族が生活に困窮し、公債を売却しました。また、この公債は銀行設立の資本金としても利用されました。金禄公債は、当時発行された公債の中でも最も巨額であり、明治10年の国家予算5100万円を大幅に超えていました。1906年（明治39年）に、すべての公債の償還が完了しました。

背景

廃藩置県によって、明治政府は全国の士族を支配下に置きましたが、人口の約5%を占める華士族への俸禄支払いが、国家予算の4割近くに達するという問題に直面しました。このため、政府は期限付きで俸禄を廃止する秩禄処分を決定しました。士族に事業資金を与えるために現金を支給するのが理想でしたが、資金不足のため、公債を交付し、毎年抽選で一部を償還する形をとりました。公債の売買を可能にすることで、償還前の士族も資金を得られるようにしました。

計算方法

金禄公債の額は、「（家禄＋賞典禄[実額]）×石代相場＝金禄本高」を算出し、その額に応じて、一時下賜年数が5年から14年まで30等級に分けられました。例えば、金禄本高が7万円以上の場合は5年分なので、金禄本高に5を掛けたものが金禄公債の額となります。

「石代相場」とは、明治5年から明治7年までの3年間の各地方の貢納石代相場の平均額です。「賞典禄の実額」は、資料に正確な記載がないものの、賞典米高から逆算して1/10を実額とし、その2年半分を一時下賜したものと考えられています。計算式にすると「賞典禄[名目額]×1/10×2.5」となります。

金禄公債額の計算式をまとめると、金禄本高が7万円以上の場合は、「（家禄＋賞典禄[名目額]×2.5/10）×石代相場×5＝金禄公債額」となります。

例えば、旧広島藩主浅野家の場合、金禄公債額は（2万5837石（家禄）＋1万5000石（賞典禄名目額）×2.5/10）×4.29535（石代相場）×5＝63万5432円60銭となります。

脚注

関連項目

賞典禄
秩禄公債
秩禄処分

参考文献

石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」『大阪大学経済学』第22号、大阪大学経済学部研究科、1972年、27 - 82頁。

外部リンク

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