金露酒造

金露酒造

概要

金露酒造株式会社（きんろしゅぞう）は、過去に日本の兵庫県神戸市で操業していた酒類製造業者です。その歴史は江戸時代後期にまで遡り、清酒の醸造を主に行っていました。主力商品である『金露』ブランドは、同社の顔として広く知られていましたが、特定の歴史的出来事によって事業継続が困難となり、その幕を閉じました。

歴史

金露酒造の起源は、文化3年（1806年）に現在の大阪府堺市で産声を上げたことにあります。創業以来、長きにわたり堺の地で清酒の醸造を続けてきました。当時から『金露』の銘柄で知られ、地域に根差した酒蔵として発展しました。20世紀に入ると、同社は酒造りの一大産地として名高い灘五郷の一角、現在の兵庫県神戸市灘区へと製造拠点を移転しました。この移転により、より高品質な酒造りを目指すとともに、大消費地へのアクセスも改善されたと考えられます。

灘の地で新たな歴史を刻み始めた金露酒造でしたが、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災によって、社屋や醸造設備は壊滅的な打撃を受けました。酒造メーカーにとって、地震による建物の倒壊や設備損壊は、復旧が極めて困難な被害であり、金露酒造も例外ではありませんでした。震災からの復旧・再建は容易ではなく、その甚大な被害を乗り越えることができず、残念ながら1997年に事業を停止し、廃業に至りました。

会社の歴史はここで一度途絶えることとなりましたが、『金露』という銘柄そのものは消滅しませんでした。みりんや料理酒の製造で広く知られる食品メーカー、キング醸造株式会社（本社：兵庫県加古郡稲美町）が、金露酒造からこの伝統ある清酒銘柄の権利を継承することを決定したためです。キング醸造は、金露酒造が培ってきた酒造りの技術や品質を尊重し、『金露』ブランドの灯を消さない選択をしました。

現在、キング醸造のラインナップにおいて、『金露上撰』などの商品名で、かつて金露酒造が世に送り出した『金露』の清酒が引き続き製造・販売されています。これにより、金露酒造の歴史は廃業という形で一度閉じられましたが、その魂とも言える銘柄は現代に受け継がれ、今も多くの人々に親しまれています。

この金露酒造の歩みは、地方の伝統産業が時代の変遷や自然災害といった困難に直面しながらも、その技術やブランドが形を変えて存続していく一例と言えるでしょう。堺で生まれ、灘で発展し、震災で廃業に至ったものの、銘柄を通じて現代にその名を残しています。

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