金髪先生

金髪先生：ロックと英語教育、そして社会への問いかけ

『金髪先生』は、1996年10月1日から1998年9月22日まで、テレビ朝日で放送された異色の音楽番組です。深夜2時台という時間枠ながら、平均2%という安定した視聴率を獲得し、2年間の放送期間を通して多くの視聴者を魅了しました。

番組の講師役を務めたのは、叫ぶ詩人の会に所属していたドリアン助川氏（現・明川哲也氏）です。当時、彼のトレードマークであった金髪と、人気ドラマ『3年B組金八先生』を掛け合わせたタイトルが番組名に採用されました。オープニングは『金八先生』のパロディで、独特な雰囲気で番組はスタートしました。

番組のメインテーマは、ロック音楽を通して英語を学ぶことでした。しかし、単なる英語教育番組にとどまらず、公民権運動、アパルトヘイト、自殺、ドラッグ、児童虐待、拒食症、アイルランド闘争など、社会問題にも深く切り込みました。各アーティストの代表曲を題材に、その楽曲が生まれた背景にある社会情勢や、アーティスト自身の葛藤を丁寧に解説することで、視聴者に深く考えさせる内容となっていました。

番組の構成は、まず「一日転校生」と呼ばれるゲストの登場から始まりました。その後、取り上げるアーティストと課題曲が発表され、アーティストの歴史や楽曲の背景、歌詞の解説へと続きます。そして、歌詞の中の構文を用いて英作文を作成する、実践的な学習要素も含まれていました。毎回、アーティストのプロモーションビデオが流される演出も番組の特徴でした。そのため、現在に至るまでソフト化はされていません。

番組は、大きく4つの期間に分けられます。

第一期では、ドリアン助川氏のバンドメンバーや友人などが「生徒」として出演。当初は3ヶ月で終了予定でしたが、予想外の視聴率の高さから放送が継続されました。ジミ・ヘンドリックスの回では、音響担当が所持していたジミ・ヘンドリックスのギターが演奏されるなど、貴重な場面もありました。

第二期では、生徒を一新し、よりメジャーなアーティストを取り上げました。この期間には、番組の内容をまとめた書籍『シャウト!金髪先生』も発売されました。小林賢太郎氏や板谷由夏氏など、多くの生徒が後に芸能界で活躍するようになりました。

第三期では、出演者の逮捕という危機に見舞われます。助川氏のバンドメンバーの一人が覚醒剤所持で逮捕されたことで、番組は打ち切りの危機に瀕しましたが、放送を継続。この出来事をきっかけに、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスを取り上げ、アーティストとドラッグとの関わりについて改めて考察しました。

第四期では、一般公募で生徒を選出したり、毎回著名人をゲストとして招いたりするなど、番組内容を一新しました。しかし、長期にわたる放送によりネタが尽き、ゲストへの時間配分が増えた結果、内容が薄くなっていき視聴率は低下。最終回では、助川氏自身を題材に、東欧革命時のチェコの民衆が歌っていた『ヘイ・ジュード』を取り上げました。この回には、過去の出演者たちが集まり、番組に花を添えました。

『金髪先生』は、ロック音楽を軸に、英語教育、社会問題への鋭い視点、そして時にユーモラスな展開を織り交ぜた、他に類を見ないユニークな番組でした。その内容は、今日でも多くの視聴者の記憶に残っていると言えるでしょう。番組スタッフや出演者の熱意と、深夜という時間帯にこそ生まれた、特別な番組だったと言えるのではないでしょうか。

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