釜山大火

釜山大火

釜山大火（ぷさんたいか、韓国語：부산역전 대화재）は、1953年11月27日に現在の韓国・釜山広域市（当時は釜山市）で発生した、市街地を巻き込む極めて大規模な火災である。戦後復興期の混迷した社会情勢下において、都市構造が抱えていた問題点が露呈した災害として記憶されている。

発生に至る背景

火災発生当時、朝鮮戦争（1950-1953年）は休戦を迎えたばかりであり、韓国国内は依然として混乱の中にあった。釜山市は、戦争中も北朝鮮の支配下に入らなかった数少ない主要都市の一つであったため、戦禍から逃れてきた国内各地からの避難民が大量に流入し、人口が急激に膨れ上がっていた。

これらの避難民の多くは、港湾地域や丘陵地帯の斜面などに、廃材や粗末な建材を用いて間に合わせの住居を建設し、極端に密集したバラック集落を形成していた。これらのバラックは非常に燃えやすい素材で造られていた上に、計画性なく建てられたため、集落内の街路は入り組んで狭く、消防車のような大型車両が通行することはほぼ不可能であった。また、密集地帯には十分な上下水道設備が整備されておらず、消火活動に必要な水を確保することも困難であった。このような状況は、万が一火災が発生した場合、容易に大規模な延焼につながる構造的な脆弱性を内包していた。

火災の発生と拡大

1953年11月27日の夜8時30分頃、まさにこうした脆弱性を抱えた地域の一つである、市中心部に近い中区瀛州洞（ヨンジンドン）地区の避難民バラック群から火の手が上がった。出火原因は明らかではないが、冬場で暖房器具を使用していたことなどが要因として考えられる。出火当時、釜山には強い季節風が吹いており、炎は風にあおられて猛烈な勢いで燃え広がった。火は密集したバラック群から瞬く間に隣接する市街地へと延焼し、手がつけられない状態となった。

消火活動は難航を極めた。狭い路地が消防隊の接近を阻み、十分な消火用水も確保できない状況下で、炎は次々と建物を飲み込んでいった。火災は丸二日以上にわたって燃え続け、最終的に鎮火されたのは30日の午前6時頃であった。

被害状況

この大火によってもたらされた被害は極めて甚大であった。人的被害としては、死者29名、負傷者も多数にのぼった。物的被害はさらに深刻で、家屋は3,132棟が全焼・全壊した。これにより、約3万人という膨大な数の人々が住む場所を失い、罹災者となった。当時の釜山市の人口規模から見ても、これは壊滅的な被害であった。

また、市の重要な機能を持つ公共施設も焼失した。釜山の海の玄関口であり、市民生活や物資輸送の要であった釜山駅の駅舎もこの火災により全焼した。鉄道機能は応急的に仮駅舎を設置して維持されたが、この大火災が戦後復興期における釜山の都市構造の脆弱性を浮き彫りにしたことを受け、その後の市街地の再開発計画が進められる中で、釜山駅は1968年に現在地へと移転することになった。これは、単なる災害復旧を超えた、釜山の都市計画における大きな転換点の一つとも言える。他にも、重要な公共施設であった釜山郵便局もこの火災で焼失した。

まとめ

釜山大火は、朝鮮戦争後の避難民問題とそれに伴う急激かつ無秩序な都市化が、防災上の脆弱性を生み出し、ひとたび災害が発生すれば甚大な被害をもたらすことを示した悲劇的な出来事であった。この大火からの復興過程は、その後の釜山の都市計画や防災対策に少なからぬ影響を与えたと考えられている。

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