針供養

針供養（はりくよう）

針供養は、折れたり曲がったり錆びたりして、使用できなくなった縫い針に感謝の気持ちを込めて供養する日本の伝統行事です。主に淡島神社やその神を祀る堂（淡島堂や粟島堂）などの寺院で執り行われています。

起源と歴史

針供養の起源については不明な点も多いですが、中国の古い慣わしが起源とされており、社日（土地神を祀る祭日）に針仕事を休むことが伝わったのではないかと言われています。日本における針供養の風習は、平安時代の清和天皇によって法輪寺に針供養の堂が建立されたことからも確認されており、9世紀後半にはすでにこの風習が存在していたと考えられています。室町時代に針が大量生産されるようになると、和歌山の淡島信仰とリンクし、江戸時代中期以降にはこの風習が全国へ広まっていきました。

日付と開催時期

針供養は主に2月8日または12月8日に行われます。特に2月8日は「事始めの日」とされ、農作業や裁縫が一時中止され、新しい作業が始まることを意味します。しかし地域によっては異なる日付が用いられ、一般的に西日本では12月8日、関東や東北では2月8日を重視する傾向があります。このため、祭りが行われる日は地域差が生まれることもあります。

供養の方法

かつて、12月8日と2月8日は「事八日」とも呼ばれ、つつしまれた日とされていました。この日には針仕事を休むべきと考えられ、使わなくなった針を神社に納めたり、豆腐やこんにゃくなどの柔らかいものに針を刺して供養することが一般的でした。このような供養を通じて、裁縫の腕前を向上させる祈りが込められています。また、一部の地域では針を土に埋めたり、豆腐やこんにゃくを海や川に流す形で供養することもありました。

富山県や石川県では「針歳暮」として饅頭や大福を享受したり、知人に贈ったりする風習が残っています。特に富山県では、12月8日に行われる針歳暮は「針歳暮荒れ」と呼ばれる特異日で、天候が荒れることが多いとされます。長野県佐久地域では、2月8日に豆腐に針をさして神棚に祀ったり、縁の下に投げ入れたりする習慣があります。

現在の針供養の実施

近年、家庭で針仕事を行うことは少なくなりましたが、洋裁や和裁に関連する教育機関や企業では、依然として針供養が行われています。かつて、東京ディズニーランドでもこの儀式が行われていたことがあるなど、針供養は多様な形で文化に根付いています。

針供養を行う寺社や団体

針供養は、様々な寺社や業界団体で行われています。例えば、法輪寺や浅草寺の針供養会、若宮八幡神社、荏柄天神社、護國山太平寺、福岡市の警固神社などがあります。また、愛知和服裁縫業協同組合や福岡和服裁縫組合もこの伝統を引き継いでいます。これらの行事は地域の風習や信仰と深く結びついており、今後も大切にされていくことでしょう。

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