針生信夫

針生信夫氏は、日本の農業界において革新的な取り組みを続ける篤農家であり、経営者です。株式会社舞台ファームをはじめ、複数の企業を率い、伝統的な農業に現代的なビジネス手法を取り入れることで、日本の食料生産体制の強化と持続可能な農業の実現を目指しています。特に、地域を超えた農家連携による大規模なネットワーク構築に情熱を注いでいます。

1962年1月3日、宮城県仙台市に代々続く農家の15代目として誕生しました。地元の宮城県農業高等学校を卒業後、宮城県立農業講習所で学び、1982年に家業を継ぐ形で就農しました。

農業経営の近代化を目指し、2004年8月20日に株式会社舞台ファームを設立しました。この会社を中心に、多角的な農業経営を展開していきます。さらに、異業種との連携も積極的に行い、2013年4月24日にはアイリスオーヤマと共同で舞台アグリイノベーション株式会社を設立。同年11月11日には、東日本地域の米生産者の連携強化を目的とした東日本コメ産業生産者連合会を設立し、その代表取締役専務に就任しました。これらの組織を通じて、生産、加工、流通、販売までを統合する「6次産業化」を推進しています。

針生氏の活動の中心にあるのは、日本の農業が抱える課題、特に耕作放棄地の増加や後継者不足といった問題への対応です。その解決策として、各地の農業者との連携による広域型ネットワークの構築を提唱・実行しています。目標は1万ヘクタールもの農地をこのネットワークで結び、規模拡大による生産効率の向上や、共同での資材購入、販路確保などを実現することです。これにより、個々の農家では困難な大規模経営やリスク分散を可能にし、農業全体の収益性向上と安定化を図っています。

食の6次産業化にも深く関与しており、その専門性は高く評価されています。2015年4月には、食の6次産業化プロデューサーの最高段位である「5」を取得しました。これは、生産にとどまらず、食品加工や流通、販売、さらには農業に関連する様々なサービスまで含めた包括的な事業展開を推進する能力を持つことを示しています。

自身の考えや取り組みについて、様々な機会を通じて社会に発信しています。テレビ番組「賢者の選択」への出演をはじめ、農業の未来に関する講演や論文執筆も多数行っています。これらの活動を通じて、日本の農業が直面する課題や、それを克服するための針生氏独自のビジョンを共有し、広く理解を求めています。過去の講演や論文には、農業の「ビックバン」や「震災復興と六次産業化」、舞台ファームの取り組みなどが含まれます。また、専門雑誌「PRESIDENT」などでもその経営手法や挑戦が紹介されており、「農業コンビニ化」による事業拡大や、震災からの復興への道筋などが取り上げられています。

針生信夫氏は、伝統を受け継ぎつつも、企業の設立、異業種連携、広域ネットワーク構築といった革新的なアプローチを通じて、日本の農業に新たな活力を注入しています。食の安全保障が改めて注目される現代において、彼の進める大規模連携と6次産業化は、日本の農業を持続可能で力強い産業へと転換させる重要な鍵となるでしょう。その飽くなき挑戦は、今後の日本農業のあり方を示す羅針盤の一つとなることが期待されています。

もう一度検索