鈴木いづみ

鈴木いづみは、1949年7月10日に静岡県伊東市で生まれ、1986年2月17日に36歳という若さでその生涯を閉じました。彼女は作家としてだけでなく、女優としても活動し、その多才ぶりを発揮しました。女優としての芸名には浅香なおみがあり、映画出演の際にはこの名が使われることもありました。

生い立ちと初期のキャリア

鈴木いづみは、静岡県立伊東高等学校を卒業後、伊東市役所でキーパンチャーとして勤務していました。しかし、文学への情熱を抱き、同人誌活動に参加していました。1969年、彼女の作品『ボニーのブルース』が小説現代新人賞の候補となったことをきっかけに、市役所を退職し、上京します。その後、ホステス、ヌードモデル、ピンク映画女優など、多様な職業を経験しながら、文筆活動を続けました。

作家としての活動

1970年、鈴木いづみは『声のない日々』で第30回文學界新人賞候補となり、作家としての第一歩を踏み出します。1973年にはアルトサックス奏者の阿部薫と結婚し、一女をもうけました。1975年には、SF作家の眉村卓の仲介により、初のSF小説「魔女見習い」が『SFマガジン』に掲載されます。しかし、1977年に阿部薫と離婚、翌年には阿部が薬物の過剰摂取で急逝するという悲劇に見舞われます。

離婚後、鈴木いづみはSF雑誌を中心に小説を発表し続けましたが、次第に健康を損ね、生活保護を受けることになります。そして、1986年、自宅で首を吊って自殺しました。

著作と映像作品

鈴木いづみは、その短い生涯の中で数多くの作品を世に送り出しました。著作には、『愛するあなた』、『あたしは天使じゃない』、『残酷メルヘン』、『女と女の世の中』、『いつだってティータイム』、『感触』（のちに「タッチ」と改題）、『恋のサイケデリック!』、『ハートに火をつけて! だれが消す』、『私小説』などがあります。また、没後には短編集やSF集、エッセイ集、語録などがまとめられ、『鈴木いづみコレクション』として刊行されました。

女優としては、『理由なき暴行 現代性犯罪絶叫篇』（浅香なおみ名義）、『銭ゲバ』（鈴木いずみ名義）、『書を捨てよ町へ出よう』（鈴木いずみ名義）、『家獣』（鈴木いづみ名義）などに出演しています。これらの作品は、彼女の多面的な才能を示すものであり、文学界と映画界の両方でその存在感を示しました。

影響とその後

1992年には、鈴木いづみと阿部薫を描いた稲葉真弓の実名小説『エンドレス・ワルツ』が刊行され、翌年には鈴木いづみの長女がプライバシー侵害と名誉毀損で民事提訴しました。1995年には若松孝二監督による映画『エンドレス・ワルツ』が公開され、鈴木いづみ役は広田玲央名が演じました。

鈴木いづみの作品は、その独特な世界観と、生々しい感情表現で、多くの読者の心を捉えました。彼女の作品は、現在でも多くの人々に読み継がれており、その文学的な価値は高く評価されています。また、その波乱に満ちた人生は、映画や小説の題材としても取り上げられ、彼女の生涯とその作品は、後世に語り継がれていくでしょう。

彼女の残した作品群は、今もなお、私たちに多くの問いを投げかけています。その文学性、人間性が色褪せることはありません。

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