銭ゲバ

『銭ゲバ』の概要

『銭ゲバ』は、ジョージ秋山による日本の少年漫画で、1970年から1971年にかけて『週刊少年サンデー』に連載されました。この物語は、貧困に苦しむ青年・蒲郡風太郎が金銭と名声を求め、殺人を犯しながらその道を突き進むピカレスクロマンです。単行本は2009年に幻冬舎から文庫版が出版され、また電子書籍としても提供されています。アナザーストーリーとして、風太郎の娘・風子を主人公とした「銭ゲバの娘プー子」や、風太郎が消費者金融の社長に転身する「銭豚」も存在します。

あらすじ

物語の主人公、蒲郡風太郎は、幼少期から左目に醜い傷を持っていました。彼の父は暴力を振るう酒乱で、母は優しいが病弱でした。家庭は貧しく、時には5円すらない日々が続きました。懸命に日々を生きる中で、心の支えとなっていたのは優しかった近所の青年でしたが、母が治療費を払えず病死したことで、風太郎は自暴自棄に陥ります。

心の支えを失った風太郎は、泥棒に走り、止めようとした青年を手にかけてしまいます。この事件をきっかけに故郷を離れ、次第に成長し大企業の社長一家に取り入り、背後で金のために殺人を犯す冷酷な男へと変貌します。彼は社長一家を犠牲にして企業を乗っ取り、その後、政治の世界にも進出します。やがて風太郎は、新聞社から「人間の幸福について」の特集執筆を依頼され、金では得られない真の幸福に思いを寄せますが、その気づきが彼を追い詰めることになります。最後には、「自分は自分の人生に勝った」とのメッセージを残して自殺します。

登場人物

蒲郡風太郎

本作の主人公。貧困の中で育ち、母の死を契機に「銭のためなら何でもやる」との信念を持ち始めます。出世と事件の連鎖を経て、最終的には自ら命を絶つ運命を辿ります。

三枝子

大昭物産社長の美人の長女。風太郎が憧れる存在で、彼の冷酷な行動に巻き込まれます。

正美

三枝子の妹で、自分のコンプレックスに悩む青年。風太郎との結婚後、不幸な運命に翻弄され、自ら命を絶ちます。

蒲郡兼三

風太郎の父親。飲んだくれの暴力男で、風太郎に嫌われています。風太郎の成長の影で苦悩が伺えます。

蒲郡久仁子

風太郎の母親。病弱で風太郎を優しく育てるも、彼女の死が風太郎を悲劇的な道へと導きます。

映画とテレビドラマ

『銭ゲバ』は1970年に映画化され、その後、2009年に松山ケンイチ主演でテレビドラマ化されました。ドラマ版では現代の社会問題が反映された設定となり、風太郎の運命が異なるストーリー展開を見せます。人気が高まり、視聴者からの評価も良好でした。

本作は、登場人物の複雑な人間関係や社会的な背景を通じて、金銭への執着とその代償を描写しています。風太郎の人生は、単なる犯罪者の物語ではなく、人生の選択や価値観に対する深い問いかけを含んでいます。

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