鈴木雅和

鈴木雅和は1952年に生まれ、ランドスケープアーキテクトとして、また東京大学農学博士として、日本の景観デザイン分野において教育、研究、実務に長らく貢献してきました。筑波大学芸術系の名誉教授であり、多岐にわたる活動を展開しています。

キャリアの出発点は、1975年に東京大学農学部農業生物学科を卒業した後の日本住宅公団（現UR都市機構）でした。ここでは約16年間にわたり造園設計の実務に携わり、関東支社や本社、東京支社など、様々な部署で設計業務に従事しました。この公団時代に培った実務経験は、後の教育・研究活動の基礎となります。

公団を離れた後、1988年からは財団法人国土開発技術技術研究センターでの勤務を経て、1989年4月からは東京大学農学部で助手としてアカデミックな道に進みました。この期間中に『緑地植物の画像を含むデータベースに関する研究』に取り組み、1990年に東京大学より農学博士号を取得しました。

1992年4月からは筑波大学へ移り、芸術学系で教鞭を執るようになりました。当初は講師、後に助教授を経て、2004年4月からは大学院人間総合科学研究科の教授に就任し、2017年3月に定年退官するまでの約26年間、環境デザインやランドスケープデザインに関する教育と研究に深く携わりました。この間、芸術学系教授も務め、多くの後進を育成しました。

筑波大学を退官し名誉教授となった現在も、その活動は続いています。特に2009年からは、新たな研究テーマとして被爆樹木に関する研究にも力を入れています。広島や長崎の被爆樹木を調査・記録し、その生命力や平和へのメッセージを伝える活動は、ランドスケープデザインの枠を超えた社会的な意義を持っています。

実務家、研究者、教育者として多くの業績を残しており、代表的なものとしては、茨城県にある七ツ洞公園の再生に関わったことなどが挙げられます。その他にも、公園や都市空間のデザイン、緑地計画に関するプロジェクトに多数関与しています。

その功績に対し、数多くの賞が贈られています。主な受賞歴としては、博士論文の研究内容で1992年に日本造園学会賞（研究論文部門）を受賞したのをはじめ、明野町コミュニティガーデンでのビズ・ガーデン大賞佳作（1997年）、日本建築学会関東支部による「美しくまちをつくるむらをつくる提案競技」での複数回にわたる優秀賞、首里城公園花祭りでの日本ディスプレイデザイン賞入選（2006年、2007年）などがあります。

さらに、筑波大学における教育・研究への貢献に対して2012年に学長表彰を受け、筑波山梅林再生プロジェクトでは2014年に日本造園学会賞（技術部門）を受賞しました。審査員としての貢献も評価され、日本学術振興会より専門委員表彰を二度（2009年、2017年）受けています。そして、2023年には造園分野における長年の研究、制作、教育、社会貢献が総合的に評価され、日本造園学会の最も栄誉ある賞の一つである上原敬二賞を受賞しています。

著書としては、自身の経験や視点を綴った『ちきゅうおひとりさん』（2023年）や、ライフワークの一つである被爆樹木に関する『写真集 ヒロシマ・ナガサキ被爆樹たちの肖像』（2021年）などがあり、研究成果や思想を広く伝えています。

鈴木雅和氏のキャリアは、実務からアカデミズムへ、そして新たな社会貢献的研究へと広がっており、日本のランドスケープ分野の発展に多大な影響を与えています。

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