鈴木鴻一郎

概要

鈴木鴻一郎（すずき こういちろう）は、1910年に生まれ、1983年に没した日本の経済学者です。東京大学の名誉教授であり、金沢経済大学や帝京大学でも教鞭を執りました。専門はマルクス経済学の経済理論であり、宇野弘蔵の後継者として、その理論を発展させました。彼の研究は、マルクス経済学の理論的な深化に大きく貢献したと評価されています。

生涯

山口県山口町で生まれた鈴木は、1930年に山口高等学校を卒業後、東京帝国大学経済学部に進学。1934年に卒業後、大倉商事に入社しますが、1935年には大原社会問題研究所に入所し、研究者の道へ進みます。その後、1940年には東京芝浦電気に入社しますが、1947年に東京帝国大学社会科学研究所の助教授として大学に戻り、1949年には同研究所の教授に昇進。1954年には東京大学経済学部の教授となり、経済学の研究と教育に尽力しました。

1961年には経済学博士号を取得し、1963年から1965年まで経済学部長を務めました。1971年に東京大学を定年退職後、金沢経済大学の経済学部教授、さらに1980年には帝京大学経済学部の教授に就任。1982年には帝京大学大学院経済学研究科長に就任するなど、晩年まで教育・研究活動に携わりました。

また、1980年には日本学士院会員に選出され、1981年には叙勲二等授瑞宝章を受章しています。1983年4月22日に肺がんのため逝去。その功績を称えられ、叙正四位が贈られました。

研究

鈴木の専門は、マルクス経済学の経済理論です。特に、宇野弘蔵の理論を継承し、それをさらに発展させた点が大きな特徴です。宇野経済学は、マルクスの『資本論』を基礎としつつ、それを現代社会の分析に応用しようとする理論体系であり、鈴木は、この理論体系の確立に大きく貢献しました。彼の研究は、価値論、地代論、恐慌論など、マルクス経済学の主要な分野を網羅しており、その理論的な深さと広がりは、後進の研究者に多大な影響を与えました。

著書・編著・翻訳

鈴木は、数多くの著書や論文を発表しています。主な著書としては、『日本農業と農業理論』(1951年)、『マルクス経済学』(1955年)、『経済学原理論』（1960年、1962年）、『資本論へん歴』（1971年）などが挙げられます。これらの著書は、マルクス経済学の理論を深く掘り下げ、その現代的な意義を明らかにしようとする試みとして、高く評価されています。また、編著としても、『現代日本資本主義大系』(1958年)、『貨幣論研究』(1959年)、『帝国主義研究』(1964年)などがあります。これらの編著は、マルクス経済学の幅広い分野をカバーし、その研究の発展に貢献しました。

翻訳においては、マルサスの『穀物条例論』や、リカードウの『価値論の批判』など、古典的な経済学の文献を翻訳し、日本の経済学研究に大きな影響を与えました。

影響

鈴木鴻一郎は、日本のマルクス経済学研究において、重要な役割を果たした人物の一人です。彼の研究は、宇野経済学の発展に大きく貢献しただけでなく、その後の経済学研究にも多大な影響を与えました。彼の著作や翻訳は、現在でも多くの経済学者や学生によって読まれており、マルクス経済学の基礎を学ぶ上で、欠かすことのできない文献となっています。

年譜

1910年：山口県山口町で生まれる
1930年：山口高等学校卒業
1934年：東京帝国大学経済学部卒業、大倉商事入社
1935年：大原社会問題研究所入所
1940年：東京芝浦電気入社
1947年：東京帝国大学社会科学研究所助教授
1949年：東京大学社会科学研究所教授
1954年：東京大学経済学部教授
1961年：経済学博士
1963年：東京大学経済学部長（-1965年）
1971年：東京大学定年退職、金沢経済大学経済学部教授
1980年：帝京大学経済学部教授、日本学士院会員
1981年：叙勲二等授瑞宝章
1982年：帝京大学大学院経済学研究科長
* 1983年：肺がんのため逝去、叙正四位

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