鈴田滋人

鈴田滋人（すずた しげと、1954年6月20日生まれ）は、日本の現代を代表する染織作家の一人であり、国の重要無形文化財「木版摺更紗（もくはんずりさらさ）」の保持者として各個認定を受けている、いわゆる人間国宝です。佐賀県鹿島市に生を受け、伝統的な染織技法を基盤としつつ、独自の芸術世界を切り拓いています。

武蔵野美術大学で日本画を専攻し、卒業後、父である鈴田照次氏の跡を継ぎました。父・照次氏は、かつて佐賀藩に伝承された幻の更紗「鍋島更紗」の復元に尽力した人物です。滋人氏は、父が歩んだ染織の道を受け継ぎ、特に木版と型紙を併用して文様を摺り染める技法である「木版摺更紗」の研究と制作に1981年から本格的に取り組み始めました。

木版摺更紗は、木彫りの版木や柿渋紙を用いた型紙を用いて、糊や染料を布に摺りつけて文様を表す高度な技術です。鈴田滋人氏は、この古来の技法を深く探求し、長年の研鑽を通じて、極めて緻密で精巧な文様表現と、複数回の重ね摺りによって生まれる奥行きのある豊かな色彩構成を特徴とする独自の作風を確立しました。氏の生み出す更紗は、伝統的な美意識と現代的な感性が融合した、他に類を見ない芸術作品として高い評価を受けています。

鈴田滋人氏が心血を注いできた「木版摺更紗」の技術は、その歴史的・芸術的価値が認められ、2008年9月11日に国の重要無形文化財に指定されました。さらに、この指定と同日付けで、鈴田氏自身がこの文化財の保持者として各個認定を受けました。これは、木版摺更紗の伝統技法を高度に体得し、その保存・伝承に多大な貢献をしている第一人者として、国によって正式に認められたことを意味します。

氏の芸術家としての功績は、数々の受賞歴によっても輝きを増しています。1982年には、日本の伝統工芸の登竜門とされる第29回日本伝統工芸展に初入選し、その後も同展を中心に作品を発表し続けました。1996年の第43回展では日本工芸会奨励賞を、1998年の第45回展ではNHK会長賞（優秀賞）を受賞するなど、主要な賞を獲得しています。また、1998年には工芸界の優れた業績に贈られる第11回MOA岡田茂吉賞工芸部門優秀賞を、2003年には伝統文化の振興に貢献した人物に贈られる第23回伝統文化ポーラ賞優秀賞を受賞しました。さらに、2024年には長年の芸術活動と伝統文化への貢献が認められ、旭日小綬章を受章しています。

現在も、生まれ故郷である佐賀県鹿島市に自身の工房を構え、創作活動の最前線に立っています。また、公益社団法人日本工芸会の常任理事を務めるなど、伝統工芸の振興や後進の育成にも力を注いでいます。鈴田滋人氏の生み出す木版摺更紗は、日本の美しい染織文化の伝統を現代に継承し、さらに発展させる貴重な存在であり、その今後の更なる創作活動が期待されています。

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