鉄道唱歌の概要
『
鉄道唱歌』(てつどうしょうか)とは、
明治時代に創作された日本の代表的な唱歌で、全5集・334番から構成されています。この作品は、当時の
鉄道の開通や日本の地理を音楽で紹介することを目的としており、多くの人々に親しまれてきました。
背景と誕生の経緯
この唱歌の誕生には、大阪の出版社「昇文館」の代表である市田元蔵の策画が大きく関わっています。市田は大和田建樹に
作詞を依頼し、
作曲には多梅稚と上真行が起用されましたが、昇文館自体は経営が厳しく、1910年には倒産寸前の状況に置かれていました。
その後、楽器店を営む三木佐助が版権を取得し、
1900年に第1集である東海道篇が『地理教育
鉄道唱歌 第一集』のタイトルで再出版されました。こちらは注目を集め、その結果、以後の年末までに全5集が発売され、広泛に流行しました。
この作品が多くの人に受け入れられた理由として、楽団による列車走行などの斬新な広告戦略があります。
構成と歌詞の特徴
『
鉄道唱歌』は基本的に沿線の名所や地理情報を詠み込んでおり、七五調の形式が特徴です。各集ごとに歌詞は様々な都市や名所を取り上げ、旅を楽しむ感覚が強く表現されています。たとえば、最初の
鎌倉や大阪、京都などの有名な地名が多く登場します。
多梅稚の
楽曲は
メロディーがキャッチーで、多く歌われるようになりましたが、他の
作曲者の作品は徐々に影が薄くなり、今では多梅稚による曲が代表的な位置を占めています。これは、彼の
メロディーが旅にまつわる楽器演奏によく合い、人々にとって親しみやすかったためです。
膨大な琴線
興味深いのは、この転調や寄り道のような表現が存在することです。例えば、歌詞の中で「横須賀行きは乗り換えと」という箇所があり、そこから各名所を経由して行くことが示されています。このように、実際の
鉄道のルートを意識した構成がされていることで、聴く人の旅心をくすぐる仕掛けになっています。
大衆的な人気と地域版の存在
『
鉄道唱歌』は、全国各地で郷土版が多数製作され、特に地方の文化や歴史を伝える作品となりました。多くの詞には名産品や民話が取り入れられ、大人にも広く支持を受けました。この曲が音楽教育の一環として位置づけられたのも、知識を歌で学ぶことが目的であったからです。
影響と歌の遺産
『
鉄道唱歌』の影響は、音楽だけにとどまらず、カラオケやメディアでも使われ続けています。広がりを見せた業界では、何度もこの歌が新たにアレンジされたり、歌われており、最近でも
品川駅や
北陸[[新幹線]]の接近
メロディとして採用されるなど、サウンドとしても活躍しています。さらに、漫画や
テレビ番組でも取り上げられ、その親しみやすさが今も生き続けています。
記念碑とこれから
1967年には、大和田建樹の生誕100周年と
鉄道開業85周年を記念して『
鉄道唱歌の碑』が建立され、彼の功績を称える場となっています。これにより、歌詞の文化的価値だけでなく、
作詞者とその時代の
鉄道への貢献も再評価されています。
今後も、この唱歌はさまざまな形で歌い継がれることでしょう。