大和田建樹

大和田建樹（おおわだ たけき）

大和田建樹は、安政4年（1857年）に伊予国宇和島に生まれ、明治43年（1910年）に53歳で生涯を閉じました。彼は、詩人、作詞家、そして国文学者として、明治の文学界に大きな足跡を残しました。

生い立ちと教育

大和田建樹は、宇和島藩士である父・大和田水雲の影響を受け、幼い頃から書道、四書、和歌、俳句に親しみました。明治2年（1869年）には培寮に入学し、漢学を学びました。同時期には穂積重樹や清家堅庭から国学や和歌の指導を受け、文学的な素養を磨きました。明治6年（1873年）頃には翻訳書を通じて外国の事情に触れ、国際的な視野も養いました。その後、宇和島藩校明倫館を卒業し、明治9年（1876年）には広島外国語学校に入学しましたが、明治11年（1878年）に母親の死により退学しました。

学究生活と教育活動

明治12年（1879年）に東京へ移り住んだ大和田は、英語、ドイツ語、ラテン語などの外国語や、博物学、哲学を学びました。明治13年（1880年）には交詢社の書記となり、明治15年（1882年）には東京大学の書記として勤務しました。明治16年（1883年）には東京大学古典講習科の講師に就任、明治19年（1886年）には高等師範学校の教授となりました。しかし、明治24年（1891年）に退職し、その後は明治女学校、立教女学校、早稲田中学校、静修女学校、青山女学院、女子語学校、跡見女学校などで教鞭を執りながら、創作活動に専念しました。

主要な作品

大和田建樹は、数多くの唱歌、軍歌、校歌の作詞を手がけました。その代表的な作品には、以下のようなものがあります。

唱歌
「舟あそび」（曲：奥好義）
「故郷の空」（曲：スコットランド民謡）
「青葉の笛」（曲：田村虎蔵）
「暁起」（曲：田中銀之助）
「あわれ少女」（曲：フォスター）
「鉄道唱歌」（曲：上真行・多梅稚・田村虎蔵・納所弁次郎・吉田信太）
軍歌
「日本陸軍」（曲：深澤登代吉）
「日本海軍」（曲：小山作之助）
* 「黄海海戦」（曲：瀬戸口藤吉）

これらの作品は、当時の人々に広く親しまれ、現代でも歌い継がれています。

その他の活動と評価

大和田建樹は、速筆家としても知られ、国文学、随筆、紀行文、詩歌など、幅広い分野で作品を残しました。その総数は、97種150冊にも及ぶと言われています。また、500人もの門人を抱え、多くの人材育成にも貢献しました。

特に「鉄道唱歌」は、市田元蔵の企画に同行し、実際に取材旅行を行い、その様子を「車窓日記」として残しました。また、『欧米名家詩集』では、理論と実際の両面から全ての詩を七五調で翻訳するなど、翻訳家としても優れた才能を発揮しました。さらに、書き言葉と話し言葉の統合や短文表現の奨励など、作文教育にも力を注ぎました。

晩年と記念碑

大和田建樹は、明治43年（1910年）に脊髄炎のため53歳で亡くなりました。その功績を称え、東京新橋駅構内には「鉄道唱歌の碑」が、宇和島駅前には「大和田建樹詩碑」が建立されました。また、明倫館の後身である明倫小学校には、大和田自筆の額が残されています。

大和田建樹は、明治の激動期において、日本の文学、音楽、教育に大きな影響を与えた人物であり、その業績は今日においても高く評価されています。

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