鉋(かんな)の世界:歴史、種類、そして現代の技術
鉋は、木材の表面を削り、滑らかに仕上げる木工用
工具です。古くから建築や家具製作など、様々な場面で使われてきました。この記事では、鉋の歴史、多様な種類、そして現代の電動カンナとの違いについて解説します。
鉋の歴史:中国から日本へ、そして世界へ
鉋の起源は
中国に遡ります。唐代の文献には、現在の台鉋とは異なる「蜈蚣鉋子」という、複数のスクレーパーが並んだ鑢のような道具が登場します。一方、日本で古くから使われていたのは「槍鉋」で、棒の先に柳の葉のような両刃が付いた形状をしています。
弥生時代からの出土品も発見されており、古代から中世にかけて建築部材の仕上げに用いられていたことがわかります。
近世以降は、台鉋が普及し、槍鉋は次第に姿を消しました。しかし、文献や発掘品、当時の柱の削り跡などを丹念に調査した結果、20世紀後半に槍鉋の復元に成功しています。台鉋の起源は明確ではありませんが、古代ローマの
ポンペイ遺跡からも出土しており、世界各地で類似の道具が見つかっています。日本の台鉋は、手前に引いて削るのに対し、欧米や
中国のものは押して削るものが主流です。日本で引いて使うようになったのは江戸時代中期以降のことです。
日本の鉋:多様な種類と高度な技術
日本の鉋、いわゆる「和鉋」は、その種類と精緻な技術によって特徴づけられます。
主な種類
平鉋: 最も基本的な鉋で、木材の表面を平滑に仕上げます。荒仕子鉋、中仕子鉋、上仕子鉋など、仕上げの段階に応じて刃の幅や形状が異なります。
長台鉋: 台が長く、直線的な削り加工に適しています。板の側面を削る際などには、摺り台という
治具と組み合わせて使用されます。
反り台鉋: 丸太や反った木材を削るために使われます。作業者が自ら木材を削り出して作ることも多く、木材の形状に合わせて様々なバリエーションがあります。
際鉋: L字型の木材の内側を削る際に使用されます。刃が片側に付いており、精密な仕上げが求められる作業に適しています。
火布倉鉋: 蟻溝や蟻桟の側面を調整するための鉋です。際鉋と同様に、精密な作業に用いられます。
導突鉋: L字型の木材の内側を削るための鉋で、際鉋と類似していますが刃の傾斜が異なります。
五徳鉋/二徳鉋: 複数の鉋の機能を兼ね備えた多機能鉋です。
立鉋: 鉋台の調整や、竹や黒檀などの硬い木材の加工に用いられます。
底取り鉋: 敷居や鴨居などの凹んだ部分の仕上げに用いられます。
脇取り鉋: 溝の側面を仕上げるための鉋で、底取り鉋と合わせて使用されます。
小穴突き鉋: 細い溝を作るための鉋です。
面取り鉋: 木材の角を面取りするための鉋で、様々な角度や形状の面取りに対応する種類があります。
飛行機鉋: 組子や障子の桟などをまとめて同じ厚さに削るための鉋です。
印籠鉋: 建具の枠に凹凸を付けて隙間なく閉じるための鉋です。
名栗鉋: 古民家の木材表面に見られるような独特の仕上げを作るための鉋です。
南京鉋: 椅子などの曲線を仕上げるための小さな鉋です。
隅突鉋: 西洋鉋のように押して使う鉋です。
逆刃鉋: 硬い木材の加工に用いられる鉋です。
大鉋: 刃の幅が広く、広い面積を効率よく削るための鉋です。
豆鉋: 指でつまんで使う小さな鉋です。
ボード鉋: 石膏ボードの加工に用いられます。
デコラ鉋: メラミン樹脂化粧板の端部を面取りするための鉋です。
替刃式鉋: 刃先だけを交換できる鉋です。
こそげ: 洗い屋だけが使う特殊な鉋です。
止め鉋: ベニア板の端部を45度に削るための鉋です。
組子鉋: 組子を作るための専用の鉋です。
熟練した大工は、鉋一つでその腕前を見せつけます。0.003mmという極薄の削りも可能ですが、鉋の技術は薄削りだけではありません。様々な種類を使いこなし、木材の特性を見極め、美しい仕上がりを実現することが重要です。
西洋鉋と中国の鉋
西洋の鉋は、押して使うことが特徴です。鋳鉄製の台を持つものや、ネジで刃の調整ができるものなどがあります。
中国の鉋も押して使うものが多く、日本の鉋とは異なる形状をしています。
電動カンナ:現代の技術
現代では、回転刃を使った電動カンナが広く使われています。可搬式と据え置き式の2種類があり、据え置き式はさらに超仕上げカンナとカンナ盤に分けられます。電動カンナは効率が良い反面、木材表面に波状の跡が残ることがあります。そのため、最終仕上げには手動鉋を使うことも多いです。
まとめ
この記事では、鉋の歴史、種類、そして現代の電動カンナについて解説しました。鉋は、木材加工に欠かせない重要な
工具であり、その歴史と技術は日本の伝統文化を象徴するものです。様々な種類の鉋が存在し、それぞれに特徴と用途があります。現代では電動カンナも普及していますが、手動鉋の繊細な技術は、今もなお多くの職人に受け継がれています。