鉱泉分析法指針

鉱泉分析法指針：温泉と鉱泉の定義、分類、そして療養泉

「鉱泉分析法指針」は、環境省自然環境局が定める行政指針であり、温泉の定義、分類、そして療養泉の基準を明確に示しています。公益財団法人中央温泉研究所が作成を担当し、1951年の初版制定以来、分析技術の進歩とともに1957年、1997年、2002年、2014年と改訂を重ね、現在に至っています。特に、1957年の改訂では、泉質名の表記を従来の和名からIUPAC名に基づく新名称へと変更するなど、大きな変革がありました。また、1982年には療養泉の見直しが行われています。

鉱泉の定義と温泉法との違い

温泉法では、地中から湧出する水蒸気やガス（炭化水素を除く）も含めて「温泉」と定義していますが、「鉱泉分析法指針」では、温泉法第二条別表に則り、常水と区別される地下水としての「鉱泉」を定義しています。具体的には、源泉の温度が摂氏25度以上、または特定の物質を一定量以上含む地下水が鉱泉とされます。この定義は、温泉法における温泉の定義をより明確に、そして科学的に裏付ける役割を担っています。

鉱泉の分類

鉱泉の分類は、泉温、液性、浸透圧の3つの要素に基づいて行われます。

泉温: 源泉の温度によって、様々な温度帯に分類されます。
液性: 湧出時のpH値によって、酸性、中性、アルカリ性のいずれかに分類されます。
* 浸透圧: 溶存物質の総量や凝固点（氷点）によって分類され、鉱泉の濃度を表す指標となります。

療養泉の定義と分類

「鉱泉分析法指針」では、治療目的に利用できる鉱泉を「療養泉」として定義し、その基準を定めています。源泉の温度が25℃以上であること、そして特定の物質を一定量以上含むことが条件となります。

療養泉の分類は、含有成分と利用目的に基づいて行われます。代表的なものとしては、溶存物質量1g/kg以上の「塩類泉」と、それ以下の「単純温泉」があります。

塩類泉は、陰イオンの主成分（塩化物イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオンなど）によってさらに分類され、さらに陽イオンの主成分の種類によって細分化されます。例えば、塩化物イオンを主成分とする塩類泉は、ナトリウム－塩化物泉、カルシウム－塩化物泉、マグネシウム－塩化物泉などに分類されます。

単純温泉は、溶存物質量が1g/kg未満で、泉温が25℃以上のものを指し、pHが8.5以上のものは「アルカリ性単純温泉」と呼ばれます。

さらに、特定の成分（二酸化炭素、鉄、酸性成分、硫黄、放射能など）を一定量以上含むものは、「特殊成分を含む療養泉」または「特殊成分を含む単純冷鉱泉」として分類されます。

改訂の歴史と今後の展望

「鉱泉分析法指針」は、分析技術の進歩や科学的知見の蓄積に合わせて、これまで何度も改訂されてきました。特に、2014年の改訂では、療養泉の定義が一部変更されるなど、最新の科学的知見を反映した内容となっています。今後も、科学技術の進歩や社会のニーズを踏まえ、適切な改訂が行われていくことが期待されます。

この指針は、温泉の科学的な理解を深め、温泉資源の適切な管理と利用に貢献する重要な役割を担っています。

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