錨を上げて (映画)

『錨を上げて』（原題：Anchors Aweigh）は、1945年に公開されたアメリカ合衆国のミュージカル映画です。現在、パブリックドメインとなっています。

この映画は、4日間の休暇でハリウッドにやってきた2人の水兵、陽気で行動的なジョゼフと内気で不器用なクラレンスを中心に物語が展開します。彼らはそこで様々な出会いと騒動を経験し、恋に落ちたり、友情を深めたりします。

本作の魅力は、何と言ってもジーン・ケリーとフランク・シナトラという当時を代表するスターの共演です。ジーン・ケリーは軽快で華麗なダンスを披露し、フランク・シナトラは甘い歌声で聴衆を魅了します。彼らの個性が存分に活かされた、軽妙洒脱な演技と、心躍る音楽は、作品全体を彩る重要な要素となっています。

さらに、ストーリーの面白さも本作の魅力の一つです。水兵2人は、迷子の少年を助けたことから、彼の叔母であるスーザンと出会います。スーザンは歌手志望の女性で、映画のエキストラとして働いています。2人の水兵は共にスーザンに惹かれ、彼女を巡ってコミカルな恋の駆け引きを繰り広げます。

その恋の行方だけでなく、様々なエピソードが盛り込まれています。例えば、ハリウッド・ボウルのコンサートシーンでは、名ピアニストのホセ・イトゥルビが20台ものピアノを用いてリストのハンガリア狂詩曲を演奏する壮大なシーンが描かれています。また、MGMの人気アニメーション作品『トムとジェリー』のジェリーが、ジーン・ケリーと共演する夢のようなダンスシーンも見逃せません。当初はミッキーマウスとの共演が企画されていたそうですが、ディズニーの許可が下りなかったため、ジェリーに交代したというエピソードも興味深いですね。

物語は、2人の水兵がスーザンへの想いを抱えながらも、嘘や誤解、そして時間の制約の中で、様々な困難に直面しながらも、最後はハッピーエンドを迎えます。彼らが互いの友情を深め、愛を見つける過程は、観る者に感動と希望を与えてくれます。

キャストは、ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、キャスリン・グレイソン、そしてホセ・イトゥルビら豪華俳優陣が出演。彼らの素晴らしい演技と歌、ダンスは、作品全体の完成度を高めています。

『錨を上げて』は、華やかなハリウッドを舞台に、恋と友情、そして音楽が織りなす、軽快で心温まるミュージカル映画です。アカデミー作曲賞を受賞した音楽、ジーン・ケリーとフランク・シナトラの共演、トムとジェリーとの異色の共演シーンなど、見どころ満載の作品ですので、ぜひご覧になってください。

監督はジョージ・シドニー。製作はジョー・パスターナク。脚本はイソベル・レナート。音楽はジョージ・ストール。撮影はロバート・プランクとチャールズ・P・ボイル。美術はセドリック・ギボンズ、ヘンリー・ジャッファ、ランダル・デュエル。編集はアドリナン・フェイザン。録音はダグラス・シアラー。作詞はサミー・カーン、作曲はジュール・スタイン、編曲はアール・ブレントと、多くの才能が結集した作品となっています。

アカデミー賞では、作曲賞を受賞し、作品賞、主演男優賞（ジーン・ケリー）、撮影賞、歌曲賞にもノミネートされました。また、本作の一場面は、ジーン・ケリーとフランク・シナトラが出演した『ザッツ・エンターテインメント』にも登場します。

『錨を上げて』は、時代を超えて愛される名作ミュージカル映画です。その魅力は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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