鎌野裕

鎌野 裕（かまの ひろし）

1947年8月12日、神奈川県茅ヶ崎市に生を受けた鎌野裕は、主に投手としてプロ野球界に籍を置いた人物である。彼のキャリアは、アマチュア野球での実績を積み、二度のドラフト指名を経てプロ入りした後、新たな道へと進むという、多様な側面を持っている。

アマチュア時代

野球人生は、日大藤沢高等学校から始まった。高校時代はチームのエースとして活躍し、1964年の秋季関東大会に出場を果たしたが、初戦で敗退し、翌春の選抜高等学校野球大会への出場は惜しくも叶わなかった。

高校卒業後は、関東学院大学に進学。神奈川五大学野球リーグでは、在学中に3度の優勝を経験するなど、大学球界で投手としての実力を磨いた。その活躍が認められ、1969年のNPBドラフト会議において、読売ジャイアンツから11位指名を受けるに至った。しかし、彼はこの指名を辞退し、社会人野球の強豪である日本楽器への入社を選択した。

日本楽器に在籍中、1971年には都市対抗野球大会の舞台に立った。だが、チームは本大会に出場したものの、鎌野自身に目立った活躍の機会は少なかったとされる。

プロ野球への挑戦

日本楽器でのプレーを経て、再びプロへの扉が開かれる。1971年のNPBドラフト会議で、当時の東映フライヤーズ（現在の北海道日本ハムファイターズ）から6位指名を受け、これを受諾。プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせた。

東映フライヤーズには1972年から1973年までの2年間在籍した。プロ入り時のポジションは投手だったが、残念ながら一軍の公式戦で投手としてマウンドに上がる機会は一度も訪れなかった。

プロ公式戦への出場は、わずか1試合に留まった。これは投手としての登板ではなく、偵察要員としての出場記録である。1972年5月12日に後楽園球場で行われた対ロッテオリオンズ戦において、7番・三塁手として先発メンバーに名を連ねたが、試合開始と同時に代えられたため、実際のプレータイムはなかった。プロ野球選手として登録された背番号は「49」であった。

投手としての技術面では、スリークォーターの投球フォームから繰り出されるカーブ、フォーク、シュートといった変化球を武器としていたと伝えられているが、プロの舞台でこれらの球種を駆使して活躍する機会には恵まれなかった。

引退後の新たな道

1973年シーズンをもってプロ野球選手としての短いキャリアに終止符を打った鎌野は、その後、全く異なる分野へと挑戦の場を移した。プロゴルファーを目指すことを決意し、その実現のために小田急電鉄系のゴルフ場に勤務しながら、ゴルフの技術向上に励んだ。野球からゴルフへの転身は、異色のセカンドキャリアとして注目される。

記録

プロ野球公式戦における主な記録は以下の通りである。

初出場・初先発出場：1972年5月12日、対ロッテオリオンズ7回戦（後楽園球場）
この試合に、7番・三塁手として先発メンバーに名を連ねた。しかし、これは相手チームの先発投手を確認するための偵察要員であり、試合開始直後に代走の末永吉幸選手と交代したため、守備や打席に立つことはなかった。

鎌野裕のプロ野球選手としてのキャリアは短く、華々しいものではなかったかもしれない。しかし、アマチュア時代から社会人、そしてプロ野球を経て、さらにプロゴルファーを目指すというその挑戦的な生き方は、多くの人々に示唆を与えるものである。

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