長井魁一郎

長井魁一郎（ながい かいいちろう）は、1920年から1995年までを生きた日本の小説家です。熊本県出身で、生涯を熊本市で過ごしました。

旧制の農業学校を卒業後、戦後は農協や教育委員会に勤務しました。文筆活動においては、「九州文学」の同人として活動し、日本農民文学会の会員でもありました。長井は、地域に根差した文学活動を展開し、その作品は、熊本の風土や歴史を背景にしたものが多く見られます。

主な受賞歴として、『肥後隈部親永の終焉』で熊日文学賞と九州文学賞を受賞しています。また、遺作となった『大東亜戦争BC級戦犯熊本県昭和殉難者銘録』では、信友社賞と熊日出版文化賞を受賞しました。これらの受賞歴は、長井の文学的才能と、社会に対する深い洞察力を示しています。

長井は、小説家としての活動の傍ら、宮本武蔵の研究にも力を注ぎました。特に、宮本武蔵の高弟である寺尾孫之允勝信（『五輪書』を武蔵から伝授された人物）の墓を発見したことは、特筆すべき功績です。1993年（平成5年）に宇土市松山で倒壊した状態であった寺尾孫之允の墓を発見し、長年の謎を解き明かしました。また、島崎の寺尾家墓地にある通称「西の武蔵塚」が、実際には宮本武蔵とは別人（平野氏夫妻）の墓であるという証拠を発見したのも長井でした。これらの発見は、宮本武蔵研究に新たな視点を提供し、郷土史研究にも貢献しました。

長井魁一郎は、文学者として、また郷土史家として、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。彼の作品と研究は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

参考文献：
福田正秀著『宮本武蔵研究論文集』歴研　2003年　ISBN 494776922X

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