長命寺桜もち

長命寺桜もち（ちょうめいじさくらもち）

長命寺桜もちとは、東京都墨田区向島五丁目に位置する、日本の伝統的な和菓子である桜もちを専門とする老舗甘味処およびその商品名です。約300年にわたり、江戸から東京へと続く人々に愛され続けています。

由来と歴史

この桜もちは、享保2年（1717年）に初代・山本新六によって考案されたと伝えられています。当時、隅田川の土手沿い、現在の墨堤通りにあたる場所は、美しい桜並木が広がる景勝地として多くの花見客で賑わっていました。山本新六は、この地の桜の葉を塩漬けにし、餅を包んで試みに販売を開始したのが始まりです。長命寺の門前で売り出されたことから「長命寺桜もち」の名で親しまれるようになりました。

桜の名所である隅田堤を訪れる人々は、その珍しい風味と香りの桜もちを大変喜び、またたく間に江戸市中で評判となります。その人気ぶりは、江戸時代後期の文政8年（1825年）に記された書物にも残されており、当時の山本や（長命寺桜もち）で一年間に消費された桜の葉の数が具体的な数字で示されています。それによると、使用された桜の葉は合計31樽にのぼり、1樽あたり約2万5千枚と換算すると、年間約77万5千枚もの葉が使われていたことになります。当時の桜もち1個には桜の葉が2枚使われていたため、年間約38万個以上の桜もちが販売されていた計算となり、その驚異的な人気がうかがえます。

特徴とこだわり

長命寺桜もちを特徴づけるのは、その香りと風味豊かな桜の葉です。使用されているのは、主に西伊豆の松崎町で生産される「オオシマザクラ」の葉です。この葉を丁寧に塩漬けにする過程で、葉が自然に発酵し、「クマリン」という芳香成分が生まれます。このクマリンによる独特の甘く爽やかな香りが、長命寺桜もちの餅と餡を包み込み、他の桜もちとは一線を画す風味を醸し出しています。長年にわたり、桜もちは単一の商品として、その品質と伝統の味を守り続けています。

店舗情報

取扱商品: 長命寺桜もちのみ
定休日: 月曜日（変更される場合があります。事前に営業カレンダーでの確認をおすすめします。）
営業時間: 午前8時30分から午後6時まで
客席: 1階店舗内に用意されています。
予約: 桜もちの電話予約を受け付けています。
駐車場: ありません。

交通アクセス

公共交通機関を利用する場合の最寄りの駅からのアクセスは以下の通りです。

東武伊勢崎線（東武スカイツリーライン）浅草駅より徒歩約20分
東武伊勢崎線（東武スカイツリーライン）とうきょうスカイツリー駅より徒歩約15分
東京メトロ銀座線浅草駅より徒歩約20分
都営地下鉄浅草線押上駅より徒歩約15分

江戸時代から変わらぬ製法と味を守り続ける長命寺桜もちは、隅田川沿いの歴史とともに歩んできた、まさに食べる江戸の文化遺産と言えるでしょう。花見の季節はもちろんのこと、一年を通して多くの人に愛される、東京を代表する銘菓の一つです。

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